日産自動車(7201)が、ついにフランスに奪われてしまいます。刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』では数年間に渡って「日産自動車をルノーから取り戻そう」と事ある毎に記事にしてきましたが、もうその可能性も潰えました。近い将来、日産自動車は完全にルノーの一部となって、東証ではなくパリ証券取引所で取引されることになるはずです。どうしてこうなってしまったのか――闇株新聞の解説です。
販売台数も時価総額も日産自動車が上なのに
技術も資産もフランスに奪われる無念
仏ルノーと日産自動車の会長を兼務するカルロス・ゴーン氏は4月16日、日本経済新聞とのインタビューで、両社の資本関係を見直す考えを示しました。
現在のゴーン氏は仏ルノーのCEOに専念しています。つい先日その任期が2022年まで延長されましたが、筆頭株主(15%)であるフランス政府には、ゴーン氏更迭の意見もかなりあったようです。
日産自動車の方はCEOの座を西川廣人氏に譲り、代表取締役会長となっています。西川氏を始めとする日本人経営陣は、ゴーン氏やルノー本社の意向を最大限に忖度して出世してきた人たちです。
資本関係を見ますと、ルノーは日産自動車の株式43.6%を保有しています。一方、日産自動車もルノーの株主を15%(フランス政府と同じ)保有する筆頭株主ですが、ルノーの連結小会社であるため議決権はありません。
ちなみにルノーが日産自動車株取得に費やした資金は総額で約8000億円ですが、日産自動車に保有させている15%の株式分とこれまでに得た現金配当で、すっかり回収済みです。
また、度重なる不正で経営危機に陥った三菱自動車も2016年5月、日産自動車が2373億円の第三者割当増資を引き受けて34%の株式を取得しており、間接的なルノー傘下です(三菱自動車の代表取締役会長はゴーン氏)。
2017年通年の世界販売台数では、日産自動車と三菱自動車を加えた「ルノー連合」が1060万台と世界第2位に浮上し、トヨタ自動車の1038万台を抜きました(1位はフォルクスワーゲンの1074万台)。
ルノーと日産自動車の資本関係は「ルノーが親、日産が子」の関係ですが、販売台数では日産自動車が581万台に対しルノーが376万台、株式時価総額も日産自動車が4兆7630億円なのに対しルノーが2826億ユーロ(3兆7388億円)など、完全に「親子逆転」となっています。
マクロン大統領とゴーン氏によって
着々と進められてきた日産強奪計画
さてここからが本題ですが、ルノーの筆頭株主であるフランス政府は、かねてよりルノーと日産自動車(自動的に三菱自動車もついてきます)の経営統合を求めており、実際には合併させてすべてフランスの会社にしようと考えています。
その急先鋒がマクロン現大統領で、2015年にはオランド政権の経済・産業・デジタル大臣として「2年以上保有する株主の議決権を2倍に」する『フロランジュ法』を強引に承認させました。
この時は「まだ」日産自動車CEOも兼任していたゴーン氏が、一応は日産自動車の少数株主の利益も代弁する立場でもあったため経営統合に反対し、日産自動車がルノーと合併して日本の会社ではなくなる事態はかろうじて回避できました。
ところが現在は、そのマクロン氏が仏大統領に大出世し、ゴーン氏はルノーの(あるいはフランス政府の)利益を最大限にするCEOの地位にあります。日産自動車の西川CEOらはゴーン氏の意向を最大限に忖度しますから、日産自動車とルノーの経営統合(というより合併)にはもはや何の障害もありません。
フランス政府とすれば日産自動車をルノーと合併させて「フランスの会社」にしてしまう経済的メリットは大変に大きいはずです。ルノーCEO更迭の予想が多かったゴーン氏が4年の任期延長を勝ち取った背景には、在任中にルノーと日産自動車を経営統合(実際には合併)させることが条件になっていると感じます。
日経新聞報道は生ぬるい
歴史ある日本の自動車会社が1つ消えるだろう
4月17日付の日本経済新聞には「ルノーと日産自動車が統合新会社を作り、両者を傘下に入れる案が浮上している」と書かれていますが、そんな生ぬるい経営統合をルノーもフランス政府も認めるはずがありません。
また同記事には「日産自動車が現在15%保有しているルノー株式を25%まで買い増せば、日本の会社法によりルノーが持つ日産自動車株の議決権が消滅する」とも書かれていますが、それはあくまでも日本の土俵で戦った場合です。
そもそも、西川CEO以下の日産自動車経営陣がゴーン氏やルノーと戦って、日産自動車がフランスのものになることに抵抗するはずがないのです。
かくして日本から(日本の株式市場からも)歴史ある自動車会社が1つ消えてしまうことになりました。本誌がいつも書くように、安直に海外(ファンドでも会社でも)に売却すると、ロクなことにならないのです。
日産自動車がルノーの資本を受け入れたのは1999年、バブル崩壊以降の販売不振で倒産寸前の経営危機に陥った時でした。ゴーン氏の手腕もあって復活しましたが、しかるべき時に手を打たなかったため食い尽くされる一方となり、ついにすべてを奪われることに…。もう取り返すことはできませんが、せめて今後の教訓としたいものです。刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』では、新聞やテレビの報道だけではわからないニュースの裏側をわかりやすく解説しています。
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