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3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

社会のリーダーとしての“プロの倫理”とは
知りながら害をなさないこと

上田惇生
【第282回】 2012年4月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
2520円(税込)

 「企業倫理や企業人の倫理については、数え切れないほど説かれてきた。だが、それらのほとんどは、なんら企業と関係がなく、倫理ともほとんど関係がない」(ドラッカー名著集(13)『マネジメント―課題、責任、実践』[上])

 企業倫理に関係がないにもかかわらず、企業倫理として説かれてきたことの典型が、企業人たる者、悪いことは、してはならないだった。企業人は、ごまかしたり、嘘をついたりしてはならない。しかし、これは、企業人ならずとも、してはならないことである。

 社長になったら人間でなくなるわけではない。社長になるまでは悪いことをしてもよいというわけでもない。悪いことをしたら罰せられるだけである。

 企業倫理に関係がないにもかかわらず、企業倫理として説かれてきたことのもう一つが、企業人たる者、紳士淑女として恥ずかしい仕事の仕方をしてはならないということだった。

 ドラッカーは、顧客をもてなすために恥ずかしい接待の仕方をすることは、美意識の問題だという。翌朝、鏡の前に立ったとき、そこにいかなる自分を見たいか。

 最近、これら2つの問題にもう一つテーマが加えられた。地域社会において、積極的かつ建設的な役割を果たすことが企業人の倫理だという。だが、ドラッカーは、その種の活動は強制されるべきものではないという。その種の活動を命じ、圧力をかけることは、組織の力の濫用である。

 マネジメント層の人間に特有の倫理とは、彼らが社会においてリーダー的な地位にあることから生ずる。リーダー的な地位にあるということは、プロフェッショナルだということである。そこで、プロに要求される倫理が、古代ギリシャの哲人で医学者のヒポクラテスが教えた医師のための誓い、「知りながら害をなすな」である。

 「医師、弁護士、組織のマネジメントのいずれであろうと、顧客に対し、必ずよい結果をもたらすと保証することはできない。最善を尽くすことしかできない。しかし、知りながら害をなすことはしないとの約束はしなければならない。顧客となる者は、プロたるものは、知りながら害をなすことはないと信じられなければならない。これを信じられなければ何も信じられない」(『マネジメント』[上])

週刊ダイヤモンド

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上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

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