AIJ投資顧問による企業年金資産消失問題を糾弾する大手マスコミも“同じ穴の貉”だった――。
国内2大通信社の一つ、時事通信社(東京都中央区)の健康保険組合(時事健保)が、健保組合員から集めた保険料の一部を、厚生労働省が禁じる外国債(仕組債)で運用し、約1億円に上る含み損を抱えていることが17日、本誌の取材で分かった。
本誌の取材に対し、時事通信社は「詳細は明かせないが、結果として遺憾に考えている」としている。
時事通信社は関係者の懲戒処分をすでに実施。含み損の穴埋めとも取れる組合員の保険料割合の引き上げを決めている。
ところが、この引き上げを決めた組合会議員の議員が、健康組合法で定められた所定の手続きを経ないまま選出されているというお粗末ぶりも発覚。その決定の正当性を問題視する厚労省と協議中だ。
厚労省は2007年度以降、健保の新たな事業運営基準を示している。「リスクが大きく、長期安定運用が見込めない」(厚労省)として、外国債への運用を原則禁止したのだ。
監査で違反が発覚すれば、指針後の分については運用停止に、それ以前の運用分についても「現行の経済状況では利益は見込めない」として、状況により、早期の償還推奨といった行政指導の対象になる。時事健保の外国債には「禁止後に購入したものある」(時事通信社)という。
関係者によると、約1300人が加入する時事健保の外国債運用とその含み損も昨年7月の厚労省の監査で指摘され露呈。その時点の保有額は、額面で計4億5000万円と見られている。しかも、そのすべてが「仕組債」だ。一般債権とは異なる特殊な「仕組み」を持つ外国債で、デリバディブを組み込んだハイリスク・ハイリターンの金融商品であるため、一般的に投資判断が難しい代物とされる。