藤沢  僕も、ヘッジファンドは、金融のベンチャー企業みたいなもので、それを日本で作りやすくするのは非常に大切だと思っています。また、日本で規制が厳しくても、結局、海外に流出するだけで、むしろ税収や雇用などで日本は損するだけですね。それに、コンプライアンス部やファンドの資産残高を計算するようなバックオフィス業務を、自前ではなく、信託銀行に外部委託していたら、かえってAIJのような事件は起きなかったわけですね。

 ところで、運用資産が数億円程度の小規模なヘッジファンドにも外部監査を義務化するのはどう思いますか?

運用資産に応じて規制を変えるのがベスト

藤野  それはコスト的に厳しいでしょうね。運用資産が3億円だとしたら、監査費用が300万円でもパフォーマンスに1%も響きます。結局、小規模な資産運用会社は日本では作れないということになるでしょう。そのような形で資産運用業から新規参入者を排除することは、日本経済にとってもマイナスだと思います。

 私は、現在のように勧誘する人数で公募と私募に分けて、監査などの規制を変えるよりも、むしろ運用資産に応じて規制を変えるべきだと考えています。AIJは2,000億円だから、社会問題になったわけですけど、3億円だったら、あくまで当事者同士の問題だった。それが、今ではAIJで損失を出した年金基金を救済するために、他の厚生年金加入者の保険料を回そうという話まで出てきてしまっている。

 例えば、運用資産が100億円以上の場合は外部監査を義務化する、というようにすればいいと思います。100億円ぐらいあれば、監査費用は負担できるでしょう。

藤沢  AIJの損失を事後的に救済するのは、僕も非常によくないと思います。ネズミ講ファンドに政府保証を付けるようなものですよね。もしそんなことがまかり通るなら、怪しげなファンドに投資した方が儲かることになってしまう。マドフ事件でもそうでしたが、このような詐欺ファンドではみなが損するわけではありません。実際に詐欺が発覚する前までに解約して現金を引き出した投資家は儲けているわけですね。