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連載経済小説 東京崩壊
【第20回】 2012年4月25日
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高嶋哲夫 [作家]

レポートの真偽

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第2章

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 「ウォーミングアップ?」

 理沙が聞き返した。

 眉根を寄せ、いぶかしげな眼で優美子を見つめている。

 「本番が始まる前の大地の準備運動。いつかは明言できないけれど、必ず大きな地震が来るそうです」

 「そんなの書いてないわよ。昨日が本番前のウォーミングアップだなんて」

 「ちょっと言えないでしょ。あれがウォーミングアップだって。東京から人がいなくなります」

 「政府は確かめてるんじゃないですか。高脇レポートの真偽について」

 「たしかに確認なしでは発表できる内容じゃないわね」

 理沙は森嶋の言葉に続けた。

 「あなたたち、上の人たちに、その話をするつもりなの」

 「それが分からないから理沙さんに会ったんです」

 「私だって分からないわよ。でも、特ダネってことは確かね。事実を確かめられればって話だけど」

 理沙はしばらく無言で考え込んでいた。

 ところでと、コーヒーカップを取ってひと口飲んで、改めて2人を見つめた。

 「あなたたち、意外と優雅なのね。デートなんかしてて。いま国交省は大忙しなんじゃないの」

 「僕たちのグループは――」

 森嶋は出かかった言葉を呑み込んだ。優美子が森嶋の足をけったのだ。

 「何なの、僕たちのグループって。もう聞いてしまったんだから、言わないと調べるだけよ。あなたたちの名前を出してね」

 「新しいグループができたんです。特別なプロジェクトのために」

 「それが首都移転なのね」

 優美子がうんざりした顔で森嶋を見ている。

 「森嶋君に聞いたんじゃないわよ。村津さんが国交省に帰って来てるでしょ。昔、彼を取材したことがあるのよ。あの人が復帰したってことは、首都移転プロジェクトが復活したってことでしょ」

 2人は頷かざるを得なかった。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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