大企業の多くがイノベーションの重要性を謳っているものの、実際に変革を果たした企業はどれほどあるのだろうか。「イノベーション」は唱えるだけで叶う魔法の呪文ではない。それを実現するには、社内政治や縄張り意識のように、現実的に乗り越えなければならない壁がある。本記事では、経営幹部への調査に基づき、特に大企業でイノベーションがうまくいかない5つの要因を紹介する。


 唱えるだけで、会社全体が発明の才にあふれ、クリエイティブになり、起業家精神を発揮する。「イノベーション」という言葉はハリー・ポッターのような魔法の呪文……ではなかった。

 いまやこの言葉は、CEOから従業員や金融アナリスト向けのメッセージに使われ、シリコンバレーの研究所の入口に掲げられ、役職にもなっている(今年になって倒産した玩具量販店のトイザらスにも、一時は「イノベーション担当役員」が存在した)。だが実際には、企業文化や事業戦略、社内政治に予算といった、数々の難題を経営陣が乗り越えて初めて、組織は新しいアイデアを拒絶することなく、むしろ積極的に受け入れられるようになる。

 筆者が編集長を務める、企業のイノベーション・チーム向けオンライン情報サービス『イノベーション・リーダー』では、2018年前半、大企業に多く見られるイノベーション阻害要因に関するアンケート調査を実施した(建設的な調査となるよう、イノベーションを促進する要因についても質問した)。企業の事業戦略担当やイノベーション担当、あるいは研究開発担当の経営幹部270人からの回答は、イノベーションの前途に光明を投じるものだった。

 本アンケートでは、イノベーションが進まない理由について、該当するものをリストからいくつでも選択し、回答してもらった。以下に、回答者の3分の1以上が「該当する」と答えた阻害要因の上位5つを紹介する。