ダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「組織に働く者は、成果には何も寄与しないが無視することはできないという種類の仕事に時間をとられる。膨大な時間が、当然に見えながら、実は、ほとんど役に立たない仕事、あるいはまったく役に立たない仕事に費やされる」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)

 ドラッカーには、時間に関する名言が多い。その多くは、ドラッカー自身が“万人の帝王学”と位置づけるロングセラー『経営者の条件』で述べられている。

 時間をマネジメントできなければなにもマネジメントできないのだから、当然といえば当然である。時間のマネジメントこそ、仕事ができるようになるための第一の条件である。

 世のため人のために優れた財・サービスを提供するためにせよ、仕事を生産的なものにして共に働く人たちが充実した仕事をできるようにするためにせよ、すべて時間を必要とする。そもそも時間のマネジメントは、自己実現の前提でもある。

 時間は買えない。借りられない。ためてもおけない。しかも、その時間は、1日に24時間しかない。そのうち3分の1は眠っている。そこで文字どおり、眠る時間を削って働いている人もいれば、勉強している人もいる。

 しかしドラッカーはこう教える。「成果を上げる者は、仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。まず、何に時間がとられているかを知ることからスタートする。次に、時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。そして、得られた自由な時間を大きくまとめる」。

 もちろん、この3つのステップだけで時間を使いこなせるようになるわけではない。ステップを踏んだうえで、さらに頭を使わなければならない。「時間の使い方を知っている者は、考えることによって成果を上げる。行動する前に考える。繰り返し起こる問題の処理について、体系的かつ徹底的に考えることに時間を使う」。

「汝自身を知れという昔からの知恵ある処方は、悲しい性の人間にとっては、不可能なほどに困難である。だが、その気があるかぎり、汝の時間を知れという命題には、誰でも従うことができる。その結果、誰でも貢献と成果への道を歩むことができる」(『経営者の条件』)

週刊ダイヤモンド