大阪市での経験から学ぶモビリティー後進国にならないための鍵握手をするトヨタ自動車の豊田章男社長(右)とソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。モビリティーの領域でどんなインパクトを残せるのか、世界中の注目が集まっている 。Photo:NurPhoto/gettyimages

 先日のモビリティーに関するトヨタ自動車とソフトバンクグループの提携発表は世界に衝撃を与えた。世界で900万台超の新車を販売し、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ。一方、情報通信とメディア事業を核に投資や買収を繰り返し次々と戦線を拡大する、暴れん坊のソフトバンク。立ち位置や文化があまりにも違う両社が提携したことは、「ITけん引産業」への転換の象徴的な動きだといえる。

 「モビリティー」とは、移動手段として自動車というモノを所有する今までの仕組みから、モノを所有せず移動手段をサービスとして提供することであり、コペルニクス的転回といえる。ソフトウエア、通信、データなどのITが飛躍的に進化したことにより、それが可能になってきた。

 ソフトバンクは、サウジアラビアと立ち上げた10兆円のファンドを通じて、米ウーバー・テクノロジーズに累計で約8000億円、中国の滴滴出行(ディーディーチューシン)には約1兆円を投資。さらに、米リフト、シンガポールのグラブ、インドのOLA、ブラジルの99など、世界中のライドシェアサービス企業へ矢継ぎ早に出資を行ってきた。トヨタがそんなソフトバンクのネットワークに引かれ、この提携に至ったことは想像に難くない。