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スポーツと経営学

見える化とKPI――サッカーで数値管理は可能か

嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]
【第2回】 2012年5月18日
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スポーツ界をビジネスの視点から見る「スポーツと経営学」。第2回は、他のスポーツ、特に野球と対比させながら、サッカーにおいて「KPI」による選手の選抜や采配が可能か考える。

数字をめぐる、サッカーと野球の違い

 今回メインで取り上げるスポーツはサッカーだ。言うまでもなく、世界中で最も多くのファンと競技人口を持つスポーツである。北アメリカ大陸と日本を除くと、あらゆる地域で最もポピュラーなスポーツと言っても過言ではない。「サッカー後進国」と言われていたアメリカでさえ、W杯でベスト8に入るなど、実績はすでに日本を上回り、特に青少年や女性、ヒスパニック系アメリカ人などを中心に、競技人口は激増している。日本でも、長らく野球の後塵を拝していたが、Jリーグ発足やW杯出場が契機となって、かなり肉薄してきたと言えるだろう。

 今回のテーマはサッカーにおいてKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)を用いた選手の選抜なり起用ができるか、さらにはそれらを監督の采配に活かせるかを考えてみようというものだ。KPIは重要業績指標という堅苦しい訳語はあるが、ここではもう少しシンプルに、何らかのパフォーマンスや結果を測定し、数値化したものと考えてもらって構わない。

 さて、面白いことに、日本においては、コアなサッカーファンとコアな野球ファンの仲は必ずしも良くない。サッカーファンに言わせれば、「野球は運動量も少ないし、国際的じゃない。動きも単線的、平板で、おじさん向け」ということになる。一方、野球ファンに言わせれば、「サッカーはとにかく点が入らなすぎる。逆転ホームランのようなシーンもなくて退屈だ。記録を楽しむという要素もないし」ということになる。

 点が入りにくいことがスポーツの面白さを削ぐかどうかについては議論は分かれよう。事実、点が入るスポーツの代表であるバスケットボールファンの中にも、点の入りすぎるアメリカのプロバスケ(NBA)より、1点の価値が重いカレッジバスケを好むというファンは少なくない。「滅多に点が入らないからこそ、点が入った時の感激が大きい」というのはサッカーファンもよく言うところである。

 それに対して、「記録について議論したりして楽しむ余地がない」という点については、サッカーファンは旗色が悪い。野球に限らず、アメリカンフットボール、バスケットボールなど、個人やチームのパフォーマンスがかなり細かく数値化され、それを楽しむファンも多いアメリカ型のスポーツに比べると、サッカーやラグビーといったイギリス型スポーツは、KPIの数が必ずしも多くないという特徴がある。

 もちろん、サッカーでも、シーズン終盤になると「最多得点」は誰か、ということが一応話題になりはする。しかし、野球で「首位打者は誰だ」「55本塁打の壁は越えられるか」「20勝投手は出るか」と盛り上がるのに比べれば、数字の占める位置づけは圧倒的に小さい。

 これはファンにとっての楽しみというだけではない。監督の采配でも同様だ。野球であれば、「このバッターは対左投手の打率が4割だからここで代打に出そう」といった、数字を基にした意思決定が下しやすい。

 一方、サッカーでは、それに相当するような細かいKPIはかなり少ないと言っていいだろう。特にディフェンス陣に関する数字は少なく、「このディフェンダーのこのシチュエーションにおける成績はこうだから、この選手を出そう」といった、数字をベースにした意思決定はかなり少ないのが現状と言えそうだ。

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嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]

東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社、主に出版、カリキュラム設計、コンテンツ開発、ライセンシングなどを担当する。現在は出版、情報発信を担当。累計120万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」や、「グロービスの実感するMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。
グロービス経営大学院や企業研修においてビジネスプラン、事業創造、管理会計、定量分析、経営戦略、マーケティングなどの講師も務める。また、オンライン経営情報誌 GLOBIS.JPなどで、さまざまな情報発信活動を行っている。


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