ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
inside Enterprise
【第645回】 2012年5月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
週刊ダイヤモンド編集部

市場部門の改革で試される
三菱東京UFJの脱国債依存

国債売買益という、偏った収益構造からの脱却は果たせるか

 三菱東京UFJ銀行がビジネスモデルの転換を行っている。

 ここ数年、邦銀はどこも収益の多くを国債の売買益で稼いでおり、その偏った収益構造に批判の声が出ていた。

 三菱東京UFJ銀も2012年3月期、これら売買益が前期比で20%も増え、2565億円に上った。これは実に、業務純益の20%近くを占める額である。

 しかし、国債の売買は、市場環境が大きく変われば損失を免れない恐れがある。しかも、今後、金利が上昇して国債が値下がりするとみる向きもあり、そうなれば売買益は今ほど見込めなくなる。

 そこで同行が着手したのが、「脱国債依存」だ。市場部門の本業である“顧客商売”比率を高め、確実に収益を上げていく方針を打ち出した。

 具体的には、これまで貸し出しを中心に展開していた海外での企業取引を拡充。顧客の実需に基づいたデリバティブ(金融派生商品)の販売など、セールス・アンド・トレーディング(S&T)業務を本格的に展開する。

 今、S&Tの粗利益は2000億円と、市場部門の25%しかない。が、この割合を3年後には50%まで引き上げ、国債などの売買益と同程度稼げるようにする考え。5年後には粗利益5000億円を目指すと、鼻息は荒い。

 国債の売買に比べると地道な収益の積み上げにはなるが、そもそも現時点でもある需要を取り切れていなかった面がある。今後の成長に欠かせない海外事業の強化のためにも、貸し出し以外の業務のてこ入れは欠かせない。

 また、貸し出しばかり伸ばせばリスクアセットは積み上がる一方だ。今後スタートする新しい自己資本規制の厳しい基準に耐えながら収益を上げようとすると、効率に限界もある。

 S&Tの拡充に伴い、市場部門の人材を200人増強、システムインフラ整備への投資も行うという三菱東京UFJ銀。その実力が試される。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

週刊ダイヤモンド

Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

今週の週刊ダイヤモンド

2014年4月26日号

週刊ダイヤモンド最新号

定価710円(税込)

週刊ダイヤモンドのサイトへ
特集

ソニー消滅!!

      
  • Prologue 消えるのはソニーか? 延命経営か?
  •   
  • Part 1 ビジョンなき“延命経営”の果て
  • 1兆円を生む“錬金術”の頓挫 ソニー生命吸収計画の全内幕
  • Interview 井原勝美●ソニーフィナンシャルホールディングス社長
  • Column ソネットに巨額の“埋蔵金” 1600億円捻出の真相
  • エレキの赤字穴埋めに消えるソニー創業の地と保有資産
  • 米国直営20店舗も一斉閉店 VAIO撤退で広がる悲劇
  • Column 人材流出で電池事業が弱体化 売却めぐり方針も二転三転 
  • Part 2 “平井ソニー”が問われる戦略と経営責任
  • 後追いする“モルモット” 明暗分かれたソニーとパナ
  • 居座り派vs改革派 経営中枢全人脈
  • Interview 平井一夫●ソニー取締役、代表執行役社長兼CEO
  • Part 3 ソニーの命運を握った男たちの素顔
  • 未来志向に生まれ変わるか 「異色コンビ」が挑む本社改革
  • Column 銀行の免許ください! 異端児たちの創業物語
  • Column スマホ事業はギャンブル!? 収益多様化が安定の鍵
  • 現場レポート “ソニーの遺伝子”が生み出すイノベーション
  • Column 世界最高の「電子の目」でアップル向けも倍増
  • Interview 鈴木智行●ソニー執行役EVP(コーポレートR&D・デバイス事業担当)
    • Epilogue “ヤメソニー”が語り継ぐものづくりの魂
  •   
  

underline

週刊ダイヤモンド1冊購読

話題の記事

週刊ダイヤモンド編集部


inside Enterprise

日々刻々、変化を続ける企業の経営環境。変化の中で各企業が模索する経営戦略とは何か?『週刊ダイヤモンド』編集部が徹底取材します。

「inside Enterprise」

⇒バックナンバー一覧