第三者に引き継ぐ場合は
事業と不動産を分離する選択肢も

 現在、自社ビルや自社工場として事業に使っている不動産でも、将来的に保有し続ける必要があるとは限らない。不動産も含めると、自社株式の株価が高くなる。そのため、親族外承継やM&Aなどで会社を第三者に引き継ぐ場合、事業をなかなか売却できないというケースもある。

「こうした場合には、事業と不動産を分離し、経営者の相続人が事業用不動産だけを引き継ぎ、これを事業の買い主に賃貸するという手もあります。この方法では、事業を引き継いだ企業には不動産の売却なく、事業の移転ができるというメリットが生じますし、不動産を相続した相続人にとっても、定期的に家賃収入が入ることになります」(平川氏)

 ただし、事業用不動産を担保に資金調達をしている場合には、この方法は使えない。業を引き継いだ会社が不動産を所有していないと、資金調達ができない場合があるからだ。

「その場合には、事業承継の前に不要な不動産を売却して借入金を返済するなど、不動産戦略と財務戦略を見直す必要が出てきます」(平川氏)

 個人事業として創業した中小企業のなかには、自社ビルなどの事業用不動産は経営者個人が所有しているケースもある。しかも、経営者個人の不動産を担保に資金を借りていることが少なくない。

「こうした状況で、事業は第三者、事業用不動産は相続人が引き継いだ場合、第三者が事業に失敗すると、相続人が引き継いだ不動産までなくなる可能性があります。これを避けるには、独自のルートで資金調達をして、担保を外すことができる企業に不動産も含めて承継してもらうことを考えるのがベストです」(平川氏)

 実際に事業を承継するまでに時間的な余裕があれば、渡す側にとっても引き継ぐ側にとっても望ましい不動産戦略を考え、選択することが可能になる。

「相続が発生してからの売却では、短期間で売らなくてはいけないため、借入や不動産の整理が難しい。余裕があるうちに戦略的に不動産の整理などに取り組む方がいいでしょう」(平川氏)