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連載経済小説 東京崩壊
【第31回】 2012年5月25日
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高嶋哲夫 [作家]

クレジット・デフォルト・スワップ

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第3章

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 「神の時間か──」

 森嶋はつぶやいた。信じられないと思いながらも受け入れざるを得なかった。だが、日本で誰がこのことを知っていて、どう対応出来るというのだ。

 「その時間もすぐに切れる。タイム・オーバーだ。来週には、彼らは再び動き始める。日本政府は対抗策を取ることが出来るのか」

 森嶋を見つめるロバートの顔に笑みが浮かんだ。

 森嶋はすぐには答えることが出来なかった。現政府に有効な対抗策が取れるとは思えない。ユニバーサル・ファンドが来ていることすら、気にかけていないだろう。今はただ地震の対応に追われているだけだ。

 「俺は一介の公務員にすぎないんだ。何が出来るというんだ」

 「公務員には、国民と国に仕え、護る義務がある。だからパブリック・サーバントと呼ばれる。日本の公務員にその意識はあるのか」

 ロバートは笑みを浮かべたまま、突き放すように言った。

 「すでに小競り合いを始めていると言ったな。日本国債の買い付けか」

 「様々な方法で、と言ったんだ」

 「日本国債の利率は長期にわたってほとんど変わってないし、空売りしようにも将来の大きな変動は見込めない。それに、いざとなれば日銀が介入する。ファンドの連中がいくら日本を財政破綻させようとしても、日銀とやり合って勝ち目はない」

 「国債の買い付けに限ればそうだろう。お前が言うように、日本国債の金利は十分低く安定しているし、国債の価格が大きく変動するとも思えない」

 ロバートの顔から笑みは消えている。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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