入社式翌日から研修を行っている甲社は新人の退職が続出したため、研修担当は頭を抱えていた。そこで昨年から責任者となったA課長が体力作りを中心とした内容に変えると、活躍する新人も現れた。今年も昨年と同様の研修を実施するが、ひ弱な新人Bが研修中に倒れてしまう。事態を知ったBの両親は、A課長とC部長に慰謝料請求をするが…。(社会保険労務士 木村政美)
全国中堅クラスの小売販売会社。従業員数はパート、アルバイトを含め2000名。
<登場人物>
A課長:人事担当課長。40歳。2年前までエリアマネージャーとして第一線で活躍。学生時代、体育会系に属し、社会人になってからも休みの日にトレーニングジムに通って体を鍛えており、体力には自信がある。昨年から研修担当の責任者になった。
B:22歳。新入社員。ひ弱で両親に溺愛されている。
C部長:総務部長。45歳。A課長の上司。
D社労士:甲社の顧問社労士。
昨年の研修効果で新人が大活躍!
今年も気合が入る課長だったが
「今年の新入社員は男性が20名、女性が10名か。今年もバシバシ鍛えるぞ!」
3月下旬のある日、A課長は新人の研修メニューを眺めながらこうつぶやいた。
甲社では、例年入社式の翌日から4泊5日の日程で新人の合宿研修を行っている。以前は上司や外部講師による座学や役割実演法(ロールプレイング)が中心だったが、体力的にも精神的にも仕事がきついという理由で退職する新人が続出したため、研修担当者は頭を抱えていた。研修担当に抜擢されたA課長は新人の体力、精神力の向上に必要性を感じ、昨年から研修の半分を体力作りと唱和訓練に注力したのだった。