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連載経済小説 東京崩壊
【第39回】 2012年6月13日
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高嶋哲夫 [作家]

3人の大臣

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第3章

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 ざわついていた室内から一瞬に音が消え、緊張が支配した。

 3人の大臣は場違いの場所にやってきたような戸惑った顔で、若手官僚たちを見ている。

 「いったい、何ごとなの」

 優美子が森嶋に身体を寄せ、低い声で言った。

 「僕が知るわけないだろ」

 3人の大臣たちは軽く頭を下げると最前列に並んで座った。

 「森嶋君、話をしてくれないか」

 村津はなんの前置きもなく、森嶋に向かって言った。

 部屋中の視線が森嶋に集まっている。

 話をするようには言われていたが、このように突然とは思わなかった。まして、3人の大臣が聞きに来るとはまったく意外だった。

 遠山が、持ってきた資料を各自に配布するように指示している。明け方、森嶋が村津にメールで送っておいたものだ。

 「森嶋君が2年間、ハーバードに留学していたのは知っていると思う。その時に『中央集権の崩壊』と『日本、遷都の歴史』という論文を書いている。今後、きみたちが仕事を進めていくに当たって、有意義なものと思う」

 さあ、というように村津が森嶋を促した。

 森嶋はホワイトボードの前に立ち、話し始めた。

 話は2時間に及んだ。最前列の3人の大臣は時折りメモを取りながら、熱心に聞いていた。

 しかし終わり頃になって、財務大臣の携帯電話が鳴り始めた。財務大臣は無言のまま携帯電話を閉じると、2人の大臣と官僚たちに頭を下げると部屋を出て行った。

 話の後、1時間ほどの質疑応答があった。森嶋にとっては、すでに何回も繰り返してきたものだった。

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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