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ワークス研究所の労働市場最前線

地方の企業・NPOで花開く「負圧のネットワーク」
新たな価値はどう生み出されているのか

五嶋正風 [ワークス研究所『Works』編集部員]
【第36回】 2012年6月21日
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 長く停滞が続く日本経済の中でも、とりわけ衰退が著しいといわれる地方。だがそんな地方を舞台に、一つひとつは多くの経営資源を持たない地域企業やNPO、地域のコミュニティといった組織同士がネットワークを組むことで、新たな価値を生み出し始めている。

 「マルヤガーデンズ」「農家のこせがれネットワーク」という2つの事例を通じて、地方で起こっている「新しい価値の生み出し方」をレポートする。「ネットワークで価値を生み出す」という点に着目すると、都会の大企業で働く人にも、地方の新たな動きには大いに学びがある。

売り場でNPOがワークショップ
「デパートの未来形」での連携

 鹿児島市の繁華街、天文館に2010年オープンした商業施設「マルヤガーデンズ」には、9フロアに10カ所の「ガーデン」という空間が点在する。ガーデンは地元のNPOや市民サークル、地元に縁のある企業などに利用されており、活動内容によって使い分けができるよう、様々な広さやしつらえの空間が用意されている。

 ダンボールの家の模型を自由に飾り付けるワークショップ、不登校の子と一緒に野菜を作るフリースクールの直売市、地元の食材を使った料理教室、ペットの里親募集会、ママさんコーラスの発表会……。月間40~50件の多彩な催しがあり、年間では約400件に及ぶ。売り場のすぐ横で、ワークショップを開催できるガーデンもある。買い物客がNPOの催しにその場で飛び入り参加といった光景も見られるという。

 地域コミュニティのガーデン利用が盛り上がりを見せるのは、オープン前から利用を希望した約40の地域コミュニティに集まってもらい、マルヤガーデンズ側と一緒にワークショップを開いたことが影響している。4回の集まりでどのような空間や設備が必要か、運用ルールや利用料金も話し合った。したがって、コミュニティ側も「一緒に育ててきた空間」だと思え、一体感が醸成されているのだ。

 テナントスペースを少しでも増やし、収益性を高めていくのが商業施設経営の常道だ。それを非営利のコミュニティにも貸し出すガーデンを、10ヵ所も設けてしまう。これはある意味、“非常識”だ。しかし、あえてこうした場を設定することで、マルヤガーデンズを魅力的な催しでいっぱいにすることができ、地域コミュニティを巻き込むことに成功している。

 「マルヤガーデンズ」はオープンから1年間は収益面で苦戦したが、最近の週末は1日1万数千人の客を集めるまでに集客力が増している。マルヤガーデンズは「たとえばガーデンでオーガニック関連のイベントが開催されるときには、紹介された食材を使ったメニューをレストランで提供したり、食品売り場で販売したり」といった連携を強め、集客をより売り上げに結び付けていきたいという。

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五嶋正風 [ワークス研究所『Works』編集部員]

(ごとうまさかぜ)慶應義塾大学法学部政治学科卒、2000年リクルート入社。就職情報サイト「リクナビ」の企画・編集を担当後、03年4月から現職。「対話=ダイアログで紡ぐ人と組織の未来」「働く人の心を守れ」「イタリア企業のネットワーク」などを担当。


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