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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本の「デフレ」のメカニズム
――財対サービス、製造業対サービス産業の差が重要

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第23回】 2012年6月21日
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 これまで、量的金融緩和政策が物価動向に影響を与えなかったことを見てきた。他方において、日本の消費者物価が長期的・継続的に下落しているのは事実である。では、なぜ物価が下落するのであろうか?

金融緩和が物価に影響するメカニズム

 金融政策が物価に影響するメカニズム(トランスミッションメカニズム)として、多くの人が考えているのは、単純な貨幣数量説のメカニズムだ。

 しかし、経済学者は、この問題を「総需要」「総供給」のフレームワークで考えている。

 供給側の基本は、「フィリップスカーブ」である。これは、もともとは、「賃金上昇率と失業率の間に負の相関がある」(賃金上昇率が高まれば、失業率が低下する)という経験則だ。

 ここで、企業が「マークアップ式価格決定行動」を取ると考える。これは、「賃金の上昇に直面した企業は、利益率を一定に保つため、製品価格を同率だけ引き上げる」という行動だ。この場合には、物価と賃金が比例することになる。

 以上から「総供給曲線」が導かれる。これは、縦軸にインフレ率、横軸に産出量をとった平面で、右上がりの曲線である。つまり、「インフレ率が高まれば、産出量が拡大する」ことを示す曲線である。

 他方、金融緩和政策は、ベースマネーを増やし、その結果マネーサプライが増え、LM曲線を右に動かす。このため、総需要を増やす。名目貨幣供給量が一定のとき、インフレ率が高まると実質貨幣供給量が減るので、縦軸にインフレ率、横軸に産出量をとった図において、右下がりの曲線が得られる。これが「総需要曲線」だ。

 金融緩和政策は名目貨幣供給量を増やすので、総需要曲線を右にシフトさせる。したがって、総供給曲線との交点は、総供給曲線に沿って右上に上がる。つまり、インフレ率が高まり、産出量も増えることになる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

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