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世界を巻き込む途上国ビジネス

シンプルなテクノロジーが生んだ「変化」。
真のイノベーションがもたらすもの

中村俊裕 [米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO]
【第4回】 2012年5月29日
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 前回の第3回では、ローテクでありながらも創造性の高いテクノロジーが途上国のマーケットで非常に必要とされており、さらにはそれが日本のモノづくり復活の鍵となるということを紹介した。

 さらに今回は、こうしたテクノロジーを途上国の貧困層が暮らすラストマイルに届けると、どのような「変化」がおこるのかについて、コペルニクが行なっているプロジェクトの調査結果を紹介しながら考えてみたい。

 コペルニクでは、できる限り多くのプロジェクトにコペルニク・フェローや大学院生チームを派遣し、われわれがテクノロジーを届けることでどのような変化が起こっているかの調査、つまり、「テクノロジーのインパクト評価」を行なっている。実際に行なった数ある調査結果のなかから、東ティモール、インドネシア、ケニアでの事例を紹介したい。

子どもが水汲みから解放される

 水汲みは主に子どもと女性の日課だ。毎日、プラスチック容器で5~10リットルの水を汲み、これを頭の上に載せて家と水源を何度も往復する。1日の大半が水汲みに費やされている人も少なくない。

 そこで2010年、コペルニクはこの負担を軽減させるために東ティモールの現地パートナーを通じて、最貧県オクシの30世帯を対象に「Qドラム」を導入した。このQドラムは、50リットルの水を一気に簡単に運べる優れモノだ。

 コペルニク・フェローの調査によれば、Qドラム導入以前は、1世帯あたりの水汲みに使う時間が1日平均81分だったが、導入後は50分へと40%近く減少した。なかでも、子どもへの負担が激減したことが大きい。

 導入前は、30世帯のうち、半分の15世帯で2人の子どもが毎日水汲みを行なっていた。しかし導入後は、2人の子どもが引き続き毎日水汲みを行なっている世帯は4世帯にまで激減。全く子どもが水汲みをしていない世帯は、9世帯から14世帯に増加した。その結果、1世帯で水汲みをする子どもの数の平均は、1.23人から0.67人へとほぼ半減している。

東ティモールでの一般的な水汲みの様子(写真左)。Qドラムを使えば、その負担は大きく軽減する(写真右)。
Photo:©Kopernik
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中村俊裕 [米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO]

京都大学法学部卒業。英国ロンドン経済政治学院で比較政治学修士号取得。国連研究機関、マッキンゼー東京支社のマネジメントコンサルタントを経て、国連開発計画(UNDP)で、東ティモールやシエラレオネなどで途上国の開発支援業務に従事。アメリカ、スイスでの国連本部業務も経験し、ソマリア、ネパール、スリランカなど紛争国を主にカバーしていた。
2009年、国連在職中に米国でNPO法人コペルニクを設立。アジアやアフリカをはじめとする途上国の、援助の手すら届きにくい最貧層が暮らす地域(ラストマイル)へ、現地のニーズに即したシンプルなテクノロジーを使った製品・サービスを提供する活動を行い、貧困層の経済的自立を支援している。
2010年、2011年には、クリントン元米大統領が主催するクリントン・グローバル・イニシアティブで登壇。2011年にはテック・クランチが主催する「クランチーズ」で表彰。2012年、世界経済会議(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダーに選出された。また、テレビ東京系の「ガイアの夜明け」やNHKなどメディアへの露出も増加している。現在は大阪大学大学院国際公共政策研究科招聘准教授も務め、マサチューセッツ工科大学(MIT)、コロンビア大学、シンガポール大学、オックスフォード大学、東大、京大など世界の大学で講演も行っている。2012年、ダイヤモンド・オンラインに連載「世界を巻き込む途上国ビジネス」を寄稿。著書に、『世界を巻き込む。』がある。
☆中村氏twitterアカウント: toshikopernik
☆コペルニク・ジャパンfacebookページ: http://www.facebook.com/kopernikjapan


世界を巻き込む途上国ビジネス

BOPビジネスという言葉も登場し、途上国に新たなマーケットを求めて進出する企業が増えている。しかしその多くは、現地のニーズをきちんと捉えたビジネスモデルになっていないことが多い。長年、国連で途上国の開発事業に携わり、現在は自身が立ち上げたNPOコペルニクにて、シンプルなテクノロジーを途上国に届ける活動を行っている中村氏が、現地ニーズに即した途上国ビジネスについて考える。

「世界を巻き込む途上国ビジネス」

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