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【第38回】 2012年6月27日
著者・コラム紹介
待兼音二郎

80年代に一大ブームとなったゲームブック
大人向けブラックコメディの傑作がiOSアプリに!

 ゲームブックというものをご存じだろうか? 「物語でもありゲームでもある」――そんなキャッチフレーズとともに1984年にイギリスから上陸し、またたく間に書店の平積みコーナーを席捲したゲーム形式の冒険物語本のことだ。当時の少年たちを熱狂させたブームは数年で去ったが、『火吹山の魔法使い』、『ソーサリー』といったタイトル名が、文庫本がすり切れるほどプレイした記憶とともに思い浮かんだ人も少なくないだろう。

 ふつうのファンタジー小説では、読者は受動的に物語を鑑賞するだけで、主人公の冒険に関与はできない。「あそこで先を急がずに村の賢者に意見を求めていれば……」「なぜ、裏切り者の言葉を信じた?」――そんな歯噛み感をページ越しにではなく、もしも自らが主人公となって肌で感じられたらどうだろう? それを実現したのがゲームブックだ。

 読者=主人公が物語の分岐点ごとに進路を選び取り、誰かに出くわすたびに戦う/交渉するなど接し方を決め、指定されたパラグラフ(番号順にならんだ項目)に飛ぶことで冒険を進め、ストーリーを紡いでいく。

アイルランド人小説家J・H・ブレナンの皮肉と諧謔にみちた文体と、フーゴ・ハルによる独特な鉛筆画のイラストが、ブラックコメディの傑作を生んだ。itunesサイト:http://itunes.apple.com/jp/app/igureirukuesutoi-ii/id508642042?mt=8

 その人気シリーズの一つ、グレイルクエスト(Grail Quest)がこのたび、iPhoneやiPadでプレイできるアプリとして復活した。しかもただの移植ではない。シリーズ全8作の最初の2作がバンドルされ、描き下ろしイラストや、アプリならではの便利機能も追加された豪華版なのだ。

 ゲームブックは分岐小説の一種ともいえるが、戦闘や罠はゲーム流にサイコロ判定で処理されるため、生命力が尽きれば主人公は死ぬ。だから何度も死んではやり直すこと(つまり回り道)が前提になる。それゆえに戦闘や迷宮脱出のスリリングさに重きを置いたゲーム性重視の作品も多い中で、グレイルクエストは読み物としての面白さと、英国風ブラックコメディの諧謔で異彩を放つ傑作だ。

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