造反も見据えた予定通りの進行
一体改革法案通過の「勝ち・負け」

 社会保障と税の一体改革法案(以下「一体改革法案」)、要は、消費税率引き上げ法案が、昨日、民主・自民・公明三党の賛成で衆議院を通過した。

 民主党内の「造反」議員はそれなりの数になったが、ここまでは予定通りの進行と言っていいだろう。採決までおとなしくしていて、様子を見ながら、土壇場になって離党覚悟で反対票を投じても、大勢は決しているのであり、この種の議員は法案に賛成した議員と大して変わらない。

 あくまでも筆者なりの公平感だが、公平に見て、一貫して反対を訴えていた小沢一郎元民主党代表は、正論の側にあった。選挙の約束は重い。消費税率を今上げることは適切ではない。小沢氏は「議員1人分」程度の貢献をしたと思う(彼がよく言う「一兵卒」の働きとは、この程度の働きを言うのだろうか)。

 ただし、法案が通る流れが決した今になってから、「新党」その他の駆け引きをするのは、政局的には1つのタイミングなのかも知れないが、政策論的にはベストを尽くしたとは言いにくい。反対する政策が実現するのであれば、政治家として、その勝負は「負け」だ。

 もっとも、有権者から見て「背信行為」であり、政策論的には「負け」ていて、加えて「情けない」のは、民主党の中で今回「中間派」と呼ばれている人々だろう。この人たちは、何をしようとして議員になったのか、さっぱりわからない。

さて、一体改革法案は、不十分ながら景気に配慮して実施する条項が付いたり、民主党なりの年金改革案が付いたりするなど、民主党の政策と議論をいくらか反映した形で提出されたが、自民・公明両党と三党で協議するプロセスで、消費税率引き上げを実施するため以外の重要事項は、木っ端微塵に粉砕された。