ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第35回】 2012年7月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

香山リカと「カネ」の話をしよう 最終回
「プライスレス」思考の落とし穴

1
nextpage

宝くじ、「いくら当たっても辞めない」!?

 宝くじで1億円当たったら……

 この4月に発表された「第25回サラリーマン川柳コンクール」のベストテン。1位に輝いた句は、

 「“宝くじ 当たれば辞める”が 合言葉」

 「よし、1億当たったら辞めるぞ!」と、おそらく誰もが一度はそんな夢想を抱いたことがあるのではないでしょうか。

 何を隠そう、私もそのひとりです。若い頃には「宝くじが当たったら、仕事を辞めちゃおう」。半分真剣に考えていたことさえあります。といっても、実際のところは面倒くさがり屋の私。ズボラな性格が幸いし(?)、宝くじを買いに行くことはついぞありませんでした。結果、妄想は現実のものとならず、今に至っています。

 みなさんはどうでしょう?宝くじで3億円が当たったらどうしますか。仕事は続けますか、それとも……?実は、あるアンケート調査で「宝くじ、いくら当たったら仕事を辞めますか?」と質問したところ、1000人中513人が「いくら当たっても辞めない」と答えたのです。

 この結果は、私にとって驚きでした。「所詮はあぶく銭。遊んで暮らせるとなっても、仕事を辞めようと考える人は少ないんだなあ」と。つまり、大半の人にとって、仕事とは生活手段以上のものなのでしょう。仕事に対して「カネ以上の価値」を見出している、期待しているということのようです。

 「カネには替えられない価値がある」

 「カネよりもずっと大切なものが世の中にはある」

 特に景気が低迷して以降、こうしたフレーズをよく耳にするようになった気がします。仕事でいえば、「やりがいを追求できる」「自分らしさを発揮する」「人とのつながりが得られる」。これらが「カネには替えられない価値」にあてはまるのでしょうか。

 こうした言いかた自体は一見美しく、好ましいことのように思えます。もちろん、私だって診療にたずさわるなかで患者さんの状態が少しでもよくなると嬉しい。金銭には替えがたいやりがいも感じます。

 しかし、気になることがあります。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
9割の日本人が知らない お金をふやす8つの習慣

9割の日本人が知らない お金をふやす8つの習慣

生形大 著

定価(税込):2017年3月   発行年月:本体1,500円+税

<内容紹介>
日系企業から転職した外資系金融マンが明かすお金の知識。なぜ日本のサラリーマンは高収入でも貧乏なのか? なぜかお金が減ってしまう人は知っておきたいお金をふやす習慣。年収1億円の元外資系金融マンが明かす「お金に働いてもらう」、「フロービジネスではなく、ストックビジネスを増やす」方法がわかる!

本を購入する
著者セミナー・予定

(POSデータ調べ、3/12~3/18)



 

香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

⇒バックナンバー一覧