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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第34回】 2012年6月25日
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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

香山リカと「カネ」の話をしよう2
中年クリエイターvs.新世代クリエイター

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中年クリエイターたちの苦悩

 「おカネはたくさんあったほうがいいでしょう?」という問いかけに反論できない社会はどこかおかしいのではないか。そう前回に書きました。

 おカネや稼ぐことについて、反論したくても、なんだかうまく反論できない。そんなもどかしさを感じることが最近、増えているように思います。

 先日、あるサブカル系の男性ライターと対談したのですが、その時、彼がこんなことをいっていました。「40代のクリエイターは病みやすい」と。

 彼いわく、40代のクリエイターが落ち込むのは、売れていない時ではなくて、むしろ売れている時。鳴かず飛ばずで貧乏生活をしている間は平気でも、本や曲がヒットすると「これでよかったのか」と思い悩むらしいのです。

 それまで見向きもされなかったのに、売れはじめた途端、周囲の人間がペコペコ頭を下げてきたりする。そして、今まで見たことのない額のおカネが入ってくる。そうすると、世間にウケて稼いだことにうしろめたさや違和感を覚える。それで精神的にまいってしまうというのです。

 世の常識からすれば、売れて儲かればメデタイ話のはず。ところが結果は逆。どうやら40代クリエイターは、私が前回で疑問を呈した「ヒトは儲けたい」という前提にあてはまらない人種のようです。

 けれども、彼らはたとえ「クリエイターたるもの、儲けなくたっていいんだ」と思っていても、大っぴらにはいいにくい。そう公言することを世間がよしとしない。そういう空気を敏感に読み取って悩んでいるのかもしれません。

 少し前ならば、「カネなんて稼いでいるほうがカッコ悪い」という感覚が、普通にあったように思います。「大衆に迎合して売れ筋ランキングなんかに入ったらアーティストとしてオシマイだ!」。そう宣言し、「武士は食わねど高楊枝」とばかりに歌番組の出演を拒否するような歌手がもてはやされる雰囲気さえありました。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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