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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第35回】 2012年7月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

香山リカと「カネ」の話をしよう 最終回
「プライスレス」思考の落とし穴

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「立ち去り型サボタージュ」

 どうも、仕事に対してカネ以上の「何か」を期待しすぎる風潮が生まれているように思うのです。とくに若者の間でその傾向が強い。

 つまり、仕事は「やりがい」「人のつながり」「自分らしさ」とセットになっていなければならない、と考える。これらがセットでなければ「やる意味がない仕事」「価値が低い仕事」である。極端にいえば、そんなふうに捉えられているように見えるのです。

 今、働きたくとも職に就けない若者が増えています。大きな社会問題となっているのは衆知の事実です。統計を見ても、2011年の若者(15~24歳)の失業率は8.2%。全世代の4.6%の倍近くにのぼっています。大学で就活中の学生たちを見ても、まさに必死の形相。大変な時代です。

 しかし、厳しい就職戦線をくぐり抜けてなんとか入社したにもかかわらず、さっさと辞めてしまう若者もかなりいる。

 近年、医療の現場でも、過酷な労働条件に意欲をそがれ、辞めてしまう医師が増えていることが問題視されています。しかも、声をあげて抗議することはなく、ただ無言で立ち去って(離職して)いく。いわば「無言の抵抗」なので、「立ち去り型サボタージュ」と呼ばれているようです。

 条件は異なるとはいえ、同じような現象が他でも起こっている。職場の人間関係でイヤな目に遭ったり、待遇に不満があったりしても、口には出さない。文句もいわずに、「自分はこんな場所にいるような人間ではない」とばかりに無言の抵抗を残して、職場に来なくなってしまう。

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    香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

    1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


    香山リカの「ほどほど論」のススメ

    好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

    「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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