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連載経済小説 東京崩壊
【第48回】 2012年7月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

最悪のスパイラル

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第3章

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〈いったい、なにが起こってるんだ。政府が関係してるのか〉

 携帯電話を耳に当てると同時に、高脇の声が飛び込んできた。

 「俺の方が知りたいよ。こっちも大騒ぎだ。今、インターネットで出回ってる地震情報について、お前たちは関係あるのか」

〈僕たちも驚いている。今日の昼の会見は中止になった。政府の要請があったらしい〉

 「あの情報は真実なのか」

 森嶋の問いかけに、一瞬の沈黙があった。しかし、高脇はすぐに言った。

〈僕にも分からない。しかし、僕らの情報でないことは確かだ〉

 「お前らの発表は何だったんだ。現在、出回っているものよりひどいものなのか」

〈似たようなものだが、もっと科学的なものだ。世界最速のスーパーコンピュータの1台で計算したんだ。僕は明日には東京に帰る。もう家族にも研究室にも伝えてある〉

 「発表はどうなる」

〈僕がいなくてもどうにでもなるさ。いや、いないほうが都合がいいのかもしれない〉

 何となく投げやりな口調の声が返ってきて、電話は切れた。

 森嶋は迷ったが理沙の番号を押した。こういうとき、やはり頼りになるのは彼女の顔の広さと情報収集力だ。10回ほど呼び出し音を聞いて切ろうとしたとき、理沙の声がした。

 「何でもいいですから、分かってることを教えてくれますか」

〈あなたの方が、すべての有力な情報源に近いのよ〉

 「でも、理沙さんの方がこういう事態には慣れてるでしょ〉

〈ネット社会の脆弱性が浮き彫りになった格好ね。私だって驚いてる。こんなに簡単に社会が躍らされるとはね〉

 理沙の言い方はすでにデマだと決めつけている。森嶋は、そうは割り切れない何かが引っかかっているのだ。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

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「連載経済小説 東京崩壊」

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