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連載経済小説 東京崩壊
【第49回】 2012年7月6日
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高嶋哲夫 [作家]

日本崩壊への秒読み

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第3章

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 「高脇という大学准教授がいたな。スーパーコンピュータ〈京〉に送り込んだ地震学者だ」

 総理は官房長官に向かって言った。

 教授に昇進させるという言葉には乗ってこなかったが、スーパーコンピュータ〈京〉を使ってより正確なシミュレーションをしたらどうか、という提案には簡単に乗ってきた。

 緊急、かつ極秘研究ということで、その足で〈京〉のある神戸の理化学研究所、計算科学研究機構に向かったはずだ。しばらくの間、黙っていてくれるだけでよかったのだが、今となっては、早く正確な発表をした方がいい。どの組織か、どこの国か不明だが、勝手なことを吹聴されるより、あの准教授に登場してもらおう。

 「現在も神戸の研究施設です」

 「近い内に施設から発表があると聞いているが」

 秘書が総理のデスクの上の書類を探し始めた。ここ数日間でかなりの量がたまっている。中から1枚のファイルを抜きだした。

 「今日、昼に発表があるはずでしたが、中止にさせました。この騒ぎですから、余計混乱を広げるだけだと判断いたしまして」

 「何を発表するつもりだった」

 「ファイルに書いてあります」

 秘書はファイルを差し出した。

 「話してくれ。読んでいる時間はない」

 一瞬困ったような表情を浮かべたが、ファイルのページをめくりながら話し始めた。

 「今後5年以内にマグニチュード8クラスの地震が、ほぼ95パーセントの確率で首都圏に起こるというものです」

 「ネットに広がっているものと同じじゃないか」

 「5年以内と半月以内では、天と地ほどの違いがあります。マグニチュードも8と9とでは、約30倍の違いです。それに、シミュレーションデータもしっかりついています。何よりスーパーコンピュータ〈京〉を使った、計算科学研究機構の名が入った論文です。信憑性が比較になりません」

 「5年以内の発生確率95パーセントというのは──」

 「東日本大震災時の宮城県沖地震の発生確率は、30年以内で99パーセントでした」

 「なぜ、発表を中止させた」

 秘書は、えっという顔で総理を見ている。

 「このような数字を発表していいんですか」

 総理は考え込んだ。

 その時、ドアが開き、秘書が入ってきた。

 「新たなサイバー攻撃が始まりました」

 総理の顔がさらに青ざめた。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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