トランプ相互関税で急落した米国株、「VIX指数」が示す“買い時”のタイミングは?Photo:PIXTA

トランプ大統領による相互関税発動で、世界の株価は暴落し、金融市場の動揺は続いている。中長期の投資家にとっては、買い場を探る好機でもある。相場の急変動時に上昇するVIX指数、別名恐怖指数を使った買い時のタイミングの測り方を紹介する。(龍谷大学経済学部教授 竹中正治)

歴史的に非常に割高だった
米国株がついに急落

 ついに米国株を中心に日本を含む内外の株価が急落した。

 急落のきっかけは報道されている通り、4月に入って公表されたトランプ政権の大規模な関税引き上げが、(1)輸入物価の上昇を通じて米国の物価上昇と景気悪化を引き起こす、(2)中国など報復的な関税の引き上げを通じて世界貿易は縮小し、世界経済全体が下押しされる、この二点への懸念が急速に強まったからだ。

 ただし「きっかけ」と「原因」は必ずしも同じではない。筆者は今年1月の論考『新NISA開始から1年、「米国株価指数1強」はいつまで続くか』で「現時点での筆者の中長期的な方針をコメントすると、米株価指数はPER(株価収益率)も割高であり(S&P500平均予想PER 21.4倍)、株式ポートフォリオに占める比率を多少下げた方が良さそうだと考えている」と述べた。

 歴史的に見て非常に割高な水準まで上がっていた米国株が、高くなり過ぎた砂の山が崩れるように崩落したのだ。

 もっとも今回の「トランプ関税ショック」は、それが世界全体の景気を押し下げるので、単なる株価下落の単なる「きっかけ」と言い切ることもできない。それは実態経済面からの株価下落の要因でもある。

 2024年1月からの新NISAでS&P500やMSCI AC(オルカン)などに連動する投資信託で定額積み立て投資をしてきた投資初心者の中には、今回の米国株の急落と円高・ドル安への揺れ戻しで、既に評価損に転じている方が多いだろう。

 初心者向けのアドバイスとしては、「こういう株価反落局面で買い続けるからこそ、長期では高いリターンが得られるのであり、投資は継続しなさい」ということに尽きる。一方、投資中級者以上の方の中には、「株価急落局面こそ買い増しすれば中長期的なリターンが上がる」と判断して、買い場探しをする人も少なくないだろう。

 しかし、どこまで下がれば底打ち反転するのか、それが常に不確実なのが株式相場というものだ。底値を拾ってやろうとタイミングを探りながら、結局買いそびれてしまうことも少なくない。

 筆者の経験では、底値を見極めようという魂胆はあまり報われない。むしろ中長期的なスタンスで買い下がる方が最終的に報われる。ただそうは言っても「報われるまでに10年も待てない」というのが、せっかちな人間の性分でもある。

 また、筆者はエコノミストとしてトランプ政権の関税政策が成功すると考えているわけではない。真逆である。その点も最後に述べよう。

 次ページでは、VIX指数を基準にした底値圏買いタイミングについて、筆者オリジナルの手法をご紹介する。