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口紅は男に売り込め!―有名ブランド再生人の非常識な3原則―
【4回目】 2012年7月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
高倉 豊 [前ウブロ・ジャパン代表取締役]

ロジカルに考えない!
日本一売れた「プチサンボン」は、ひらめきから生まれた。

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 「ひらめき」というのは、論理から離れた発想です。そのためか、ロジカル・シンキングよりも軽視されがちだと感じます。しかし、私はこの「ひらめき」を重視し、ヒット商品を生み出してきました。その1つ、1994年に輸入フレグランスの売上高で1位となった「プチサンボン」の事例を紹介します。

ロジカルに考えないための「脳内ホワイトボード」

  「ひらめき」というのは、論理から離れた発想です。そのためか、そこから生まれた着想は、ロジカル・シンキングよりも軽視されがちのように感じます。

 しかし、我々は無意識のうちに、ひらめきから仮説を組み立てて行動していますし、多くのヒット商品や発明は、ひらめきから生まれているのはよく知られています。ニュートンもそうです。
  彼はリンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の発見に結びつけました。「リンゴは木から落ちる」という出来事から、発想を飛躍させられたのは、論理ではなく「ひらめき=直感」です。

  私は、何か新しい企画を考える際、「ひらめき」を重視してきました。そして、その糸口を作るために、「脳内ホワイトボード」を活用してきました。

  やり方は簡単です。まず頭の中にホワイトボードを思い浮かべます。そして、ホワイトボードの真ん中に、まず目標をドンと据えます。
  それから、その目標達成のために必要と思われる情報やデータを、目標のまわりにパラパラとちりばめて置いていきます。

  手持ちの材料に関しては、過去の売上データや商品情報、予算といった定量的な情報だけでなく、世の中の流れや上司の性格、取引先の社長夫人の趣味といった、定性的な情報も含めて並べてみましょう。

   最初の段階では、ちょっとでも役に立ちそうと思った情報は、どんどん入れ込んでいくことをおすすめします。

 この時のホワイトボードの置き方もポイント。会議室にあるように垂直な立て方をするのではなく、テーブルの上に水平に置くイメージです。
  なぜ置き方にこだわるのかといえば、垂直に立っている通常のホワイトボードのイメージだと、「重要な情報は上、あまり重要と思わない情報は下」というふうに、無意識のうちに情報に優劣をつけてしまいがちだからです。

 プチサンボンはこうしてヒットした

 では、この「ひらめき」を重視したことで、成功した実例を1つご紹介しましょう。
  それは、私がジバンシイ時代に手がけた「プチサンボン」の発売キャンペーンです。

  プチサンボンは、ジバンシイがフランスの子供服ブランド「タルティーヌ・エ・ショコラ」の依頼で作った、ベビー用のフレグランス。赤ちゃんにも香りをつけさせるとは、香水の文化や歴史が長い、ヨーロッパならではの商品開発です。

 ちなみに、私がパルファム・ジバンシイ日本法人の代表取締役だった20年ほど前の日本でのフレグランスの浸透度はというと、女性が香水を日常使いする習慣はほとんどありませんでした。

 当時は、海外旅行のお土産として有名ブランドの香水を買って帰っても、もらった女性はちょっと試した後にしまい込んでそのまま、という状況が一般的。フレグランスのマーケットは、日本の化粧品総売上の2%以下と、非常に小さいものだったのです。

  そうした状況下、「参考までに」というかたちで1991年にジバンシイ本社から送られてきたのが、プチサンボンのサンプルでした。

  さっそく包みを開けてみると、パステルブルーの可愛らしいパッケージです。

  香りを嗅いでみると、日本人が大好きな、清々しい石鹸の香り。かすかに柑橘系のフルーティなノート(香り立ち)も漂います。「これはいける!」と、ピンと来ました。
  本社にすぐ、プチサンボンをぜひ売りたいと言ったところ、猛反対。

  「他社のOEM商品を売る暇があったら、ジバンシイ本来の香水を売れ」

  「日本はまだ、大人用のフレグランスも売れてないんだから、赤ちゃん用なんて売れるわけないだろう」

 もちろん、そんなことで引き下がらないのが高倉です。

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高倉 豊(たかくら・ゆたか) [前ウブロ・ジャパン代表取締役]

1948年、兵庫県生まれ。自由学園男子最高学部を卒業後、1970年に博報堂に入社。入社5年目から、中東&欧州に計11年間に滞在。39歳で博報堂を退社。
翌年40歳の時、未経験業界の外資系高級化粧品メーカー、パルファム・ジバンシイの日本法人トップに抜擢される。以降、イヴ・サンローラン・パルファンやシスレーの日本法人、外資系高級時計メーカーのタグホイヤーやウブロの日本法人、計5社の外資トップを20年間務める。その間、次々と自社の業績を回復させ、「ブランド再生人」として業界で評判を呼ぶ。
輸入フレグランスの販売高で1994年に1位となった「プチサンボン」を 送り出し、ライトフレグランス市場をつくる。最後に就任したウブロでは、5年間で売上を3倍にし、憧れの時計ブランドへと成長させる。2011年6月末、ウブロ社長を辞任。現在は、ブランド再生アドバイザーとして活躍するかたわら、執筆・講演活動を行っている。本書が初の著書となる。


口紅は男に売り込め!―有名ブランド再生人の非常識な3原則―

たとえば、口紅の色数が少なく、広告予算もなく、スタッフも4人という状態で、「売ってこい!」と上司に言われたらどうしますか? 本連載の著者、高倉氏が考えたのは、「ネーム入り口紅を、女性へのギフトとして男性に売る」という戦略でした。結果は大成功! ブランド名を一気に知らしめるヒット商品になりました。どんなに厳しい条件の中でも解決策を探すために、高倉氏が実践してきた3つの考え方を、本連載では紹介します。

「口紅は男に売り込め!―有名ブランド再生人の非常識な3原則―」

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