2007年の時点では、企業によるSNSの活用は極めて限定的であり、エアビーアンドビーやウーバーは存在すらしていなかった。いまや、それらは当たり前である。テクノロジーがこれほど普及したのであれば、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)も進んだと思うかもしれないが、その答えはノーだ。PwCの調査により、その実態が見えてきた。


 2007年の米国を振り返ってみよう。バラク・オバマという名の若き上院議員が、大統領選への出馬を表明した。住宅バブルの崩壊が始まった。アップルは初代iPhoneを発売した。

 それほど昔のことではない。とはいえ、テクノロジーの観点から見れば、はるか遠い過去である。配車や民泊などのシェアリングサービス企業はまだ存在せず、第一世代のソーシャルメディア・プラットフォームが流行し始めたばかりの頃だ。

 以降、実に多くが変わった。当社PwC(プライスウォーターハウスクーパース)も、その変遷を目の当たりにしてきた。

 我々は2007年から、世界の最大手企業のリーダーらを対象に、グローバル・デジタルIQ調査を毎年実施している。自社の事業変革にテクノロジーを活用する際の、彼らの心理、優先事項、課題がどう変化してきたかを追跡してきた。

 では、デジタルに関して具体的に何が変わったのか。その変化は多岐に及ぶ。

 一例として、10年前には企業の主な注力対象は、データマイニング、検索技術、バーチャル上での協働であった。今日、企業幹部が力を入れているのは人工知能、機械学習、IoTである。

 2007年当時、企業はモバイル戦略を持っていなかった。顧客との緊密な関係の構築や、従業員間の協働の促進においても、当然ながらモバイルは活用されていない。ビジネス目標の実現に向けて、企業が一斉にフェイスブック等のソーシャルプラットフォームを活用し始めるのは、もっと先のことだ。消費者向けのテクノロジーとその可能性に、企業はほとんど目を向けていなかった。

 いまでは「デジタル」という言葉の意味さえも、幾分変わっている。かつては「IT」と同義で用いられてきた。昨今では、企業のデジタル戦略は実質的に、ロードマップを左右し、マーケティングや営業、人事を含む多くの部門の目標を決定づけている。

 したがって、今日の企業は2007年当時に比べ、デジタルIQがはるかに高いはず――そう期待するのが自然ではないだろうか。

 驚くことに、答えはノーである。