尖閣諸島問題を巡る世論の高まり
ハンドリングを誤れば安全保障を脅かす

 尖閣諸島問題を巡るやりとりが活発化している。日本は尖閣諸島を実効的支配下に置くとともに、「領土問題は存在しない」という立場をとっているが、中国や台湾は「自らの領土である」と言うクレームを続けている。

 石原東京都知事は、尖閣諸島を東京都が購入するという意図を明らかにし、購入資金としてすでに13億円の寄付を集めたと伝えられている。最近になって政府は、「尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理」のため国が直接購入する意図を明らかにした。

 現在、尖閣諸島のうち魚釣島、南小島、北小島の3島は民間人に保有され、政府がこれらの島を賃借しているが、来年3月末に賃借期限が到来することとなっている。このような東京都知事や国の購入方針に対し、中国や台湾は強い非難をしていると伝えられている。

 一方、わが国の世論調査では、国民の大多数はこれらの島を国ないし都が購入することに賛意を示しているが、過去の経緯や問題の所在について十分な知識を持った上での判断ではないのかもしれない。

 この問題は、ハンドリングを間違えれば国家安全保障を脅かす事態となる恐れもあるので、国民1人1人が正確な知識を持った上で事の是非についての判断をしていくべきものと思う。

 尖閣諸島は日本の敗戦後、米国が沖縄県の一部として施政権を行使し、1972年の沖縄返還時にこの施政権が日本に返還された。したがって、尖閣諸島は現在日本の施政権下にある地域であり、日米安全保障条約第5条の適用がある(すなわち、尖閣諸島が侵略されれば米国の防衛義務も生じる。この点は一時曖昧にされたが、近年はクリントン国務長官をはじめ、繰り返し明言されている)。