16日に開かれた「さようなら原発10万人集会」は、広い代々木公園を埋め尽くした。毎週金曜日に行われている首相官邸への抗議行動は回を重ねるたびに参加者が増え続けているという。

 今回のデモや集会は、政党や団体が開催しているものではない。ネットを通じて自発的に集まった人たちだ。自発的に参集した人たちの熱意とエネルギーは、動員された人たちのそれと比べて、優に10倍の強さがあるだろう。

 16日の集会は、作家の大江健三郎氏や音楽家の坂本龍一氏が呼びかけたという。呼びかけた人が信頼できる人だと安心して出掛ける人も多くなるはずだ。老婆心ながら、参加者数の「主催者発表」は必要ない。参加者数ばかり気にしているような誤解を与える。メディアにでも推定させればよいだろう。

 脱原発運動が水量を増しているのは、その中核に、今まで原発に無関心だった人、黙認、容認してきた人などがいるからだ。そんな人たちの反省、後悔が一段と大きな広がりをもたらしている。

拡大化する「脱原発デモ」にも
“事なかれ主義”な野田首相

 さて、野田佳彦首相は、官邸を囲む大きな抗議の声を耳にして「大きな音ですね」とつぶやいたと伝えられた。いくらなんでもこれは何らかの誤解か聞き間違いであると思いたい。

 これに懲りたか、その後首相は「しっかりと受け止めたい」と発言した。いかにも事なかれ主義の空虚な言葉で、心に響くものがない。