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野口悠紀雄の「経済大転換論」

量的緩和政策と「時間軸効果」

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第27回】 2012年7月19日
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 前回述べたように、アメリカの量的緩和政策であるQE1、QE2に関して、直接的効果は認められるが、失業率や住宅価格など実物経済への影響はほとんど認められない。

 ただし、日本の量的緩和の場合とは違って、マネタリーストックは増えた。つまり、銀行の貸出が増えて、信用創造のメカニズムはある程度働いた。

 では、そのマネーは、どこに行ったのだろうか?

新興国バブルは生じなかった

 マネタリーストックが増えた場合の効果としてマクロ経済学が想定しているのは、投資の増加だ。しかし、前回述べたように、投資は増えなかった。

 効果は、主として資産価格の上昇に見られる。

 まず、株価急騰のきっかけにはなった。【図表1】に見るように、ダウ平均株価は、10年9月から11年3月頃までの間に3割近く上昇した。また、国債価格も上昇した。こうして、金融機関のバランスシートは急速に回復した。

 ところで、QE2の実施直後から、「アメリカ発の過剰流動性は世界的なバブルを誘発する」ということが盛んに言われた。「過剰流動性はドル・キャリートレードを誘発して海外にあふれ出す。そして、新興国市場と世界共通の市場であるコモディティ市場に流れ込み、バブルを起こす」との考えである。資源コモディティ分野などでは、「バーナンキ・バブル」「バーナンキ・インフレ」ということが言われた。

 しかし、実際にはそうならなかった。

 【図表2】に見るように、香港の恒生指數(ハンセン指数)は、10年10月頃から若干上昇したが、それほど顕著でない。上海の上證綜合指數(上海総合指数)も10年10月に若干上昇しただけだ。経済危機前の高水準はいまだに回復できていない。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

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