記録がなければ支払いはせず
まるで「消えた年金問題」

 今回の問題で、給料を本来より少なく支払ったのは、形式上は加盟店になる。とはいえSEJ本部は、問題の原因は自社にあるとして、その費用を負担するとしている。

 ところが、給与データが本部に残っているのは、12年3月から今年11月までの7年9月間だけだった。それ以前に本来より少ない手当しか受け取れなかった従業員や元従業員については、当時の給与明細や、店舗に保管された記録がなければ、支払いには応じられないという。

 常識的に考えれば、8年以上前にパートやアルバイトとして勤務していた際の毎月の給与明細を、現在まで紙で保管しているという従業員はまれだろう。まるで旧社会保険庁(現日本年金機構)の「消えた年金問題」が勃発した際の混乱ぶりを彷彿とさせる状況だ。

 他にも加盟店の労務問題をめぐっては、従業員の社会保険料の支払いをしておらず、違法な状態にある店舗が多数存在している。SEJを含め抜本的な解決策を見いだせないまま放置されている状況だ。

 永松社長は記者会見でこうした加盟店の存在を認め、社内に専門部署を設置し、加盟店向けに加入を促す「勉強会」を開催していると説明した。

 だが、コンビニの労務問題に詳しい社会保険労務士の安紗弥香氏は「オーナー側は保険加入義務を認識しているが、収益が厳しく、保険料を支払う余裕がないケースが多い」と指摘する。

 永松社長は会見で、加盟店支援策として「年間100億円を投じてチャージ(SEJが加盟店から徴収するロイヤルティー)を見直した」と強調した。

 ただしそれは本サイトで以前指摘(「セブンの加盟店ロイヤルティー減額を独自試算、人件費上昇分を下回る店舗も」)したように、1店舗当たりの負担軽減額はわずかで、毎年の最低賃金上昇分すらカバーできない店舗が存在する。

 今回明らかになった給料の“計算ミス”は、SEJ内部の杜撰なガバナンス問題の一端だ。本部社員による商品の無断発注など、加盟店との関係をめぐる問題は他にも山積している。永松社長は今回、月額報酬10%減、3カ月間という自らへの処分を発表した。

 コンビニの労務問題に真正面から取り組む気概があるのか否か。SEJのガバナンスへの視線は厳しくなるばかりだ。