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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

大衆抗議デモに発展した王子製紙の排水管計画
中国市民の環境意識の変化に応じた情報発信を

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第115回】 2012年8月2日
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 啓東。日本人のほとんどが知らないこの町は7月28日、大規模な大衆抗議デモが起きたため、一躍日本で広く知られるようになった。江蘇省南通市に進出した製紙大手の王子製紙が排出する廃水を海に流すために、南通市政府は啓東の沖に放出する排水管の設置工事を計画し、その実施を進めている。生活環境が脅かされると危惧する啓東の市民たちが立ち上がり、インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などを通じ、呼び掛けあい、大規模なデモとなったのだ。

大衆抗議デモが起こった啓東は
漁業も盛んで上海蟹などの生息地

 そもそも南通市を知っている日本人もかなり少ないと思うが、その南通市の管轄下にある啓東市に至っては、ほとんどの日本人はまず知らないだろう。しかし、実際、この啓東市は、上海にもっとも近い町と言っても過言ではない。

 長江が東シナ海に流れ込む河口に、台湾と海南島に次いで、中国で3番目に大きい島がある。崇明島だ。上海市に属する唯一の県でもある。島の北側は東シナ海に流れ込む長江の川筋を隔てて、啓東市と同じく南通市の管轄下にある海門市が広がる。

 今や長江の水底トンネルや橋によって、市街地が上海と結ばれた啓東には、多くの上海市民にも知られていない秘密がある。行政区画上、上海市崇明県と呼ばれる崇明島の北側には、実は上海に属さない土地がある。飛び地のように島の北側に広がるその一角は、永隆沙と興隆沙と呼ばれる。

 そのうち、永隆沙は全て啓東市に帰属し、啓隆郷と呼ばれる。興隆沙はその南東部を除いて、海門市の海永郷の管轄下にある。行政上の所属先である海門市、啓東市と長江を隔てて臨むこの2つの飛び地は、すでに実質的に崇明島と陸続きになっており、「江蘇省内の上海」と呼ばれるほどだ。実際、これまで、この2つの飛び地はやがて上海に帰属するのではないかと噂されたことが何度もあった。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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