自動車、家電をはじめ、日本の製造業はよく「過剰品質」だと言われる。新興国市場が急拡大し、あらゆる産業がグローバル競争にさらされている時代である。その中で、日本企業は高品質の追求よりも、コストダウンやイノベーションの実現に力を注ぐべきだ、という指摘がある。

 しかし日本製品の過剰品質は本当に“有害”なのか。

「市場に見合った、そこそこの品質でよい」という声には、違和感を覚える。まるで野球のピッチャーに「腕を縮めて投げろ、ボールを置きにいけ」と言っているようにも聞こえるのだ。

 むしろ、過剰と言えるほどの並外れた品質があって、初めて強い競争力を持ち得るのではないか。サービスも同じだ。過剰と思えるようなサービス品質があって、初めて顧客の心に刺さるのではないだろうか。

経営効率無視で
接客するカメラ量販店

 日本の中小企業を取材していて面白いのは、一見、無謀で常識外れに見えるような思い込みや、無駄で非効率と思われるサービスが逆に強烈な個性、強みとなって、快進撃を続けている企業に出くわすことだ。

 例えば、栃木県でカメラ量販店チェーンを展開しているサトーカメラという会社がある。大手家電量販店がしのぎを削る栃木県で、カメラ販売がなんと14年連続シェアナンバーワン、一眼レフに至っては県内シェアが60%という圧倒的な強さを見せる会社だ。

 サトーカメラは、店員のスキルが凄まじく高い。カメラの構造や仕組みはもちろん、各メーカーの製品のそれぞれの特色、機能の違い、さらには撮影シーンに応じたカメラの使い方などまで、膨大な知識を身につけている。そして、その知識を駆使して「これでもか」といわんばかりに、ときには1時間、2時間かけて懇切丁寧に商品説明をする。

 その結果、サトーカメラで商品を買った人は8割がリピート客になってしまうという。店員の過剰なスキルと接客サービスによって、カメラ販売の激戦区で高シェアを獲得しているのだ。