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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

欧州危機から何を学ぶか(1)
国債暴落が招く「危機の伝染効果」

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第6回】 2012年8月6日
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欧州危機は
対岸の火事ではない

 欧州で起きている財政危機から、私たちは多くの教訓を得ることができる。欧州危機を対岸の火事として見るのではなく、日本に置き換えて考える必要があるのだ。

 財政危機はいったん表面化すれば、その波及のスピードは非常に速い。国債の価格の暴落が起きれば、政府でもそれを止めることは難しい。国債価格が暴落することは、金融システムが破壊されることでもある。財政危機は金融危機でもある。

 いったん危機が表面化すれば、財政問題は深刻な政治問題となる。財政を健全化させるためには、増税や大胆な歳出カットが必要だ。しかし、財政健全化策で国民を説得させるのは容易ではない。野党は財政再建策を批判する。国家財政がさらに厳しくなったとしても、そして国民経済が深刻な危機に陥っても、国民を説得することは容易ではない。

 日本の財政は表面的には安定している。政府債務はたしかに多いが、国債は非常に低い金利(高い価格)で取引されている。日本の潤沢な貯蓄が、国債を安定的に購入しているからだ。財政運営には何の困難もないように見える。

 しかし、ギリシャ財政も少し前までは安定していたのだ。最近でこそ30%を超えるような高い金利を付けているギリシャ国債(10年物国債の長期金利)であるが、2010年の年初までは5%前後の水準をキープしていた。ドイツ国債の利回りとそれほど変わらない水準であったのだ。

 深刻な国債価格の下落に悩むスペインも、2008年のリーマンショック前は、財政収支は黒字であった。リーマンショック後、金融危機から財政収支が急速に悪化し、それが国債価格の下落を引き起こす結果となった。そして国債価格の下落(国債金利の上昇)によって、財政を維持することが不可能になりつつある。欧州の他の国からの支援なしには、財政を維持することは不可能な状況である。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

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