育児に積極的に参加する「イクメン」が、本格的に増加の兆しを見せ始めた。先日発表された厚生労働省の『2011年度雇用均等基本調査』では、男性による育児休業取得の割合が2.63%と過去最高を記録したことが明らかになった。しかしこの数字は、厚労省が掲げる「2020年度に13%」という目標には遠く及ばない。日本の職場には、育休を取得する男性社員に対する偏見や反感が根強く残っており、まだまだ育休を取得しづらい雰囲気があるからだ。そこで気になるのが、育休を取るイクメンたちの増加は、本当に企業にとってデメリットばかりなのかということだ。現状を見ると、その点がしっかり議論されず、あえてフタがされているように感じられる。専門家の分析や各種データを基に、「イクメンの真の価値」を検証したい。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)
男性の育休取得は過去最高でも
国の目標には遠く及ばない現実
突然だが、あなたは妻に「育児休業を取って欲しい」と頼まれたら、どう感じるだろうか――。
世間では、男性が育児に参加する機運が高まっている。育児を積極的にこなす男性を指す「イクメン」という言葉が流行語になったのは、2010年のこと。タレントや政治家が「イクメン宣言」をしたことで、この言葉は一気に全国に知れ渡った。
先日発表された厚生労働省の『2011年度雇用均等基本調査』では、男性による育児休業取得の割合が前年度比1.29ポイント増の2.63%と過去最高を記録したことが明らかになり、このニュースは方々で報じられた(ちなみに、女性の取得率は前年度比3.5ポイント増の87.8%で、過去3番目の高水準)。
「イクメン」がもてはやされる背景には、長引く不況の中、共働きで家庭を営む夫婦が多くなっており、女性と男性が育児を分担する必要性が高まっていることがある。その1つの策として、海外の先進国から見ても取得率が低い男性の育児休業を推進しようとする機運が高まってきているのだ。厚生労働省も「イクメンプロジェクト」を立ち上げ、HPやイベントなどを通して、普及啓発に乗り出している。
そもそも、育休は「育児・介護休業法」によって男女共に認められている労働者の権利。会社員は、子どもが1歳(一定の事情がある場合は1歳半)になるまで、申請すれば育休を取ることができる。