継続的な金利の不正操作が確認されれば、経営陣の責任問題に発展する可能性がある
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「今日はどのくらいでLIBORを提示するのか」

「これまでと同じ65だ」

「大きな取引がある。少し下げられないか」

「ああ、わかった」

 英大手銀行のバークレイズをはじめ、欧米の金融機関でロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作が相次いで発覚する中、ついに三菱東京UFJ銀行でも火の手が上がり始めた。

 冒頭のやりとりは、金融市場の動揺が続いていた2009年2月、ロンドン市内に本社を置く金融ブローカーの社員と、三菱UFJで円建て取引の金利を申告していた外国人行員の通話内容だ。

 円LIBORの不正操作をにおわす通話記録を見つけたのは、英金融サービス機構(FSA)。英FSAは以前から、不正操作に関与した疑いで、この金融ブローカーのメールや電話の記録などを徹底的に調査していた。

 英FSAは7月末、この通話記録を三菱UFJに突き付け、あらためて事実関係の調査を求めてきた。幹部の1人はその記録を見たとき「ショックで言葉が出なかった」と話す。会話の内容から、不正操作に継続的に関与していた様子がうかがえたからだ。

 三菱UFJは、ドルや円など複数の通貨でLIBORの提示銀行となっており、担当者が英国銀行協会に日々自行の金利を申告している。LIBORは世界中の企業向け融資や住宅ローン、金融派生商品(デリバティブ)などの金利を設定する際の「基軸金利」としての役割を持つ。

 市場を大きくゆがめる基軸金利の不正操作が欧米の金融機関で次々に発覚した後も、三菱UFJは「さすがにうちは問題ないだろうと思い込んでいた」(幹部)だけに、衝撃は大きかった。