米リチウムイオン二次電池ベンチャーが身売り
これは、EVバブル崩壊への前兆なのか!?

「やはり、もたなかったか…」

 EV(電気自動車)など次世代車ビジネス関係者の多くが、そう漏らした。

 2012年8月8日、経営不振に陥っていた米リチウムイオン二次電池ベンチャーの「A123システムズ」は、中国自動車部品大手「萬向集団」が同社の株式過半数以上(投資総額約356億円)を取得するとの覚書を交わしたと発表した。

 A123システムズは元々、MIT(米マサチューセッツ工科大学)発の学内ベンチャー。オバマ政権のグリーンニューディール政策のなかでは、EVベンチャーの「テスラ」と並び称される“次世代ビジネスの星”だった。A123システムズは2009年1月7日、DOE(米エネルギー省)によるATVMIP(Advanced Technology Vehicles Manufacturing Incentive Program) というローン申請が受理された。その額、1.84ビリオン米ドル(約1454億円)。

 当初の事業計画は、2013年までにハイブリッド車500万台、またはプラグインハイブリッド車50万台向けの電池パック供給だった。それに対応し、ミシガン州デトロイト郊外で大規模生産拠点の建設を明らかにした。ローンの返済期間について同社は明らかにしていないが、同じくATVMIPの対象となったテスラの場合「返済期間は10年間だ」(同社経理関係者)という。

「第三次EVバブル」は本当に崩壊するのか?<br />EVの未来はアメリカに振り回されっぱなしA123システムズが、クライスラー向けに想定した、電池パック各種。  Photo by Kenji Momota

 こうして、潤沢な資金を得たA123システムズは、次世代エネルギー関連のシンポジウムや学会等では、派手な展示とプレゼンテーションによりメディアへの露出度も大きかった。

 だが、大口の販売先が定まらず、経営は徐々に逼迫。当初、最大顧客として見込んでいたクライスラーの経営破綻により、EV向け納入話がご破産になった。そのため、スマートグリッド向けとして大型商業施設や工場向けの大型蓄電設備への売り込みを強化していった。