Pier 3. 健全な事業運営
業種・業態で優先度は異なる

 Pier 3. は、いわゆる事業継続計画内の検討項目において、全ての企業で最低限議論されるべき内容のチェックです。そのため、業種・業態、あるいはその商品やサービスなどの社会的な位置付けによって、優先度が異なります。

 一般的に企業の事業継続計画は、対象が地震であっても、台風などの自然災害であっても、今回のパンデミック感染症であっても、前提は同じです。つまり、ステークホルダーに対して、持続可能な企業として組織が“ちゃんと”危機管理をしていることを示すために、マネジメントシステム(基本方針、組織、責任者、分析、対応策、教育・訓練、PDCAといった一連の管理を行う仕組み)という外部から唯一評価されるフレームワークがあります。

 しかし、マネジメントシステムを構築するには、通常1年程度必要になりますが、この段階では、刻々と変化する状況に、スピード感を持って、かつ柔軟に対応することが求められます。

 この48のチェックリストは、危機管理のベースとなる「理想像」からの乖離を知るためのツールです。何ができていて、何ができていないのか。これを経営陣に把握してもらい、企業として実施優先度が高い項目は何かを決める足掛かりになります。

 例えば、いまだに通常のサージカルマスクや危機管理用高機能マスク、個人防護具や消毒剤が手に入らない企業も少なくありません。

 この48のチェックリストは、何割の「はい」があったかで評価されるのではなく、「いいえ」の項目の内容を知り、いつ、どこで、だれが、どのように、どのような優先度で実施するのかを素早く検討するために活用いただきたいと思います。

 最後に、このチェックリストは“現段階”でのチェック項目であり、さらに感染が縮小していく近い将来には、また違う項目のチェックリストが求められます。特に事業継続を根本的な変革につなげようとしている企業にとって、遠くない時期にこれらの議論に基づいたチェックリストが必要になってくるでしょう。

(プリンシプルBCP研究所 所長 林田朋之)