
日本経済は「需要不足」から「供給制約」へと局面を変えている。輸入物価上昇から始まったインフレは内生化し、物価上昇が3年にわたり2%超を維持し、建築費や米価の急騰が日常を揺るがしている。インフレ期待の高まりや人手不足など内生的要因が物価に与える影響を考察し、金融政策や財政政策の再構築が迫られている現状を分析する。(龍谷大学名誉教授 竹中正治)
輸入インフレは終焉
国内的な要因で期待インフレ率上昇
4月の消費者物価指数(総合)の上昇率は前年同月比で3.5%。生鮮食品とエネルギーを除くベースでも同3.0%の上昇だ。消費者物価指数(総合)が前年同月比で2%を超えたのは2022年4月(+2.4%)だから、それ以降フルに3年間消費者物価は2%超が継続している。
そうした状況下、昨年後半から米価が2倍強に高騰した。米価のみならず、建築費の高騰も顕著になり、マンション価格などの高騰の要因になっている。
筆者が見る限り、今の日本経済の問題は、従来のマクロ的な需要不足から供給制約に既にシフトしている。3%台のインフレも、輸入インフレの波及はとっくに終焉し、期待インフレ率の上昇を伴う国内的なインフレ要因が強くなっている。それに応じた政策転換が必要だ。
次ページでは、その変化の要因、望ましい政策について検証する。