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井熊均の「性能神話」を打ち破れ

「組み合わせ」でいかに新たな価値を生むか
自動車産業に見る「夢空間」再生の萌芽

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]
【第6回】 2012年9月12日
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ハードウェアに頼った組み合わせは、「組み合わせという単品」を生むだけである。性能限界の壁に突き当たっても、新しい価値を生み出そうとする技術者のモチベーションこそが、組み合わせによる付加価値を生む源泉であり、それを支えるのは経営者のビジョンである。今、日本が時代を先取りし、そうした新しい価値を提供できるのは自動車業界だ。日本の自動車業界は「ハイブリッド」「ICT」「エネルギー」の三つの軸により構成される夢のような空間の先頭を走っている。

「組み合わせ
という単品」の罠

 性能限界に突き当たったら、色々な技術を組み合わせて新しい価値を創り上げよう、という考え方は間違っていない。問題は、「技術を組み合わせればいいというものではない」ということだ。

 日本政府が推進していている「パッケージ型インフラ輸出」という戦略がある。単品ではなく、複数の技術をパッケージにして、付加価値の高いインフラ市場を開拓していこうという政策である。まさに、組み合わせ発想であり、政策の方向性は時宣を得ている。しかし、中には単純に複数の技術を組み合わせているだけで、企業としての取り組みは単品技術売りと何も変わらないと思われるケースもある。

 前回、三つの組み合わせの事例 を示した。すなわち、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル、BMWの組み合わせ型のラインアップ、そしてiPhone、iPad、iTunesなどからなるアップルワールドだ。組み合わせの付加価値はコンバインドサイクル、BMW、アップルの順に高くなる。

 コンバインドサイクルの発電効率は際立って高いが、仮に従来型の火力発電の技術を改善することで同じだけの発電効率を実現できたら、商品としての価値は同等である。つまり、発電技術である限り、コンバインドサイクルは発電効率を改善するための手法に過ぎない。

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井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]

いくま ひとし/1983年早稲田大学大学院理工学研究科修了、三菱重工業(株)入社、90年日本総合研究所入社、95年アイエスブイ・ジャパン設立と同時に同社、取締役に就任(兼務)、97年ファーストエスコ設立と同時に同社マネージャーに就任(兼務)、2003年早稲田大学大学院非常勤講師(兼務)、03年イーキュービック設立と同時に取締役就任(兼務)、06年日本総合研究所 執行役員 就任。近著に『次世代エネルギーの最終戦略-使う側から変える未来』(2011年、東洋経済新報社)『電力不足時代の企業のエネルギー戦略』(2012年、中央経済社)。


井熊均の「性能神話」を打ち破れ

日本企業の凋落がとまらない。企業の産業戦略の基本理念であった「雁行モデル」では、もはやグローバル社会で戦えなくなってきている。その理由は、性能を上げれば逃げ切れる、という性能神話にある。今こそ日本企業は、単品の性能神話から脱し、自らの「組み合わせ」の強みを再認識し、グローバル戦略の中核に据えるべきだ。中国をはじめ新興国で多くのエコシティビジネスを手がける日本総研の井熊均氏が、日本復活のチャンスを問う。

「井熊均の「性能神話」を打ち破れ」

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