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井熊均の「性能神話」を打ち破れ

手中の技術は「性能限界」に達したと考え
「組み合わせ発想」に活路を見出す

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]
【第5回】 2012年8月29日
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「理論限界」「知覚限界」という二つの壁を越えるチャレンジは、これまでの企業発展の原動力になってきたのは事実だ。しかし、その成功体験こそが新たな成長に向けた呪縛になっている。今回は「手中にある技術の性能はもう上がらない」と考えた上で、複数の技術をつなげて新たな価値を生み出す「組み合わせ」の発想を提言したい。

「もう性能は上がらない」と
考えてみよう

 前々回前回と、性能には「理論限界」、「知覚限界」という二つの壁があると述べた。

 今後、こうした性能の壁をどのように捉えるかが、製造業の帰趨を決める。壁を乗り越えることで未来が洋々と広がるのなら、犠牲を払ってでも取り組む価値はある。しかし、例えば、テレビのような製品で見る側が知覚できない高みに達したところで、誰も振り返ってはくれない。このように、性能限界の壁を越えるチャレンジは、企業発展の原動力にもなる一方、無駄に苦労を積み重ねるだけということにもなりうる。

 今日、日本経済があるのは多くの先達が性能の壁を乗り越えてきたからであるのは間違いない。しかし、本連載では、その成功体験こそが新たな成長に向けた呪縛になっているのではないか、と問いたい。成功体験に根差した呪縛を解き放って、目の前にある壁を乗り越えるには、性能への期待を頭から払拭することが必要だ。そこで、今回は「手の中にある技術が全て性能限界に達している」と考えた上で、次なる戦略を検討していきたい。

コストを下げるか
価値を高めるかの二者選択

 「技術が全て性能限界に達している」としたら、市場のニーズに応え、競争者を戦っていくためには企業は何をすべきだろうか。一つは、言うまでもなく、コストを徹底的に下げて競争力を高めることである。もう一つは、今の技術に何かを加えて、商品としての価値を高めることだ。言い換えると、単体では表現できない価値を生み出そう、とすることだ。道はこの二つしかない。性能の差がほとんどなくなっているのに、わずかな差に期待して、コスト競争に巻き込まれない第三の道があると思うべきではない。

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井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]

いくま ひとし/1983年早稲田大学大学院理工学研究科修了、三菱重工業(株)入社、90年日本総合研究所入社、95年アイエスブイ・ジャパン設立と同時に同社、取締役に就任(兼務)、97年ファーストエスコ設立と同時に同社マネージャーに就任(兼務)、2003年早稲田大学大学院非常勤講師(兼務)、03年イーキュービック設立と同時に取締役就任(兼務)、06年日本総合研究所 執行役員 就任。近著に『次世代エネルギーの最終戦略-使う側から変える未来』(2011年、東洋経済新報社)『電力不足時代の企業のエネルギー戦略』(2012年、中央経済社)。


井熊均の「性能神話」を打ち破れ

日本企業の凋落がとまらない。企業の産業戦略の基本理念であった「雁行モデル」では、もはやグローバル社会で戦えなくなってきている。その理由は、性能を上げれば逃げ切れる、という性能神話にある。今こそ日本企業は、単品の性能神話から脱し、自らの「組み合わせ」の強みを再認識し、グローバル戦略の中核に据えるべきだ。中国をはじめ新興国で多くのエコシティビジネスを手がける日本総研の井熊均氏が、日本復活のチャンスを問う。

「井熊均の「性能神話」を打ち破れ」

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