ヨーロッパ中央銀行(ECB)が南欧国債の無制限買い入れを決定した。
これまで欧州金融安定化策の中心になると考えられていたのは、ESM(欧州安定メカニズム European Stability Mechanism)を中心とした問題国国債の買い入れだ。これは、基金を積み立てて国債を購入する方式だ。
それに対して、ECBの購入は、通貨を増発して国債を購入する。つまり、国債の貨幣化である。その意味で大きな方向転換だ。「欧州連合の基本条約が禁じる中央銀行による財政支援」だとして、ドイツが最後まで反対したのは当然だ。
ECBのドラギ総裁は、数カ月前に「ユーロ防衛のため、ECBが無制限に支援する」と述べていた。しかし、その後、ドイツの反対があって後退していた。数カ月の遅れをもって、「際限なく買う」方式を実現したわけだ。
一般には、条件とされている財政緊縮をスペインが受け入れるか否かが問題とされている。しかし、本当の問題は、ユーロも国債の貨幣化に踏み切ったことであり、それによってユーロが弱くなることだ。以下では、この観点から今回の決定の意味を考えることとしよう。
これまではEFSF
という救済基金方式
これまでのユーロ圏の金融安定化策は、2つの流れで行なわれてきた。第1は、救済基金方式だ。これまではEFSF(欧州金融安定ファシリティー European Financial Stability Facility)を中心に行なわれ、今年10月からはESMに引き継がれる。
第2は、ECBによる国債購入である。これらについて、これまでの経緯を見ると、つぎのとおりだ。
2009年10月にギリシャの財政赤字粉飾が暴露され、それまで5%程度だった10年債利回りが上昇し、国債の発行が困難となった。このため、10年5月に、IMF(国際通貨基金)から300億ユーロ、EU(欧州連合)経由で800億ユーロの合計1100億ユーロの融資が実行されることとなった(ギリシャ第1次支援)。
問題がギリシャに留まらないことが明らかになったため、10年6月、ユーロ参加17カ国によって、特別目的会社であるEFSFが、13年6月までの時限措置として設立された。融資枠は4400億ユーロで、必要な資金は、債券の発行によって調達することとされた。