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野口悠紀雄の「経済大転換論」

ECBの国債購入は、ユーロ問題を解決せず悪化させる

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第34回】 2012年9月13日
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 ヨーロッパ中央銀行(ECB)が南欧国債の無制限買い入れを決定した。

 これまで欧州金融安定化策の中心になると考えられていたのは、ESM(欧州安定メカニズム European Stability Mechanism)を中心とした問題国国債の買い入れだ。これは、基金を積み立てて国債を購入する方式だ。

 それに対して、ECBの購入は、通貨を増発して国債を購入する。つまり、国債の貨幣化である。その意味で大きな方向転換だ。「欧州連合の基本条約が禁じる中央銀行による財政支援」だとして、ドイツが最後まで反対したのは当然だ。

 ECBのドラギ総裁は、数カ月前に「ユーロ防衛のため、ECBが無制限に支援する」と述べていた。しかし、その後、ドイツの反対があって後退していた。数カ月の遅れをもって、「際限なく買う」方式を実現したわけだ。

 一般には、条件とされている財政緊縮をスペインが受け入れるか否かが問題とされている。しかし、本当の問題は、ユーロも国債の貨幣化に踏み切ったことであり、それによってユーロが弱くなることだ。以下では、この観点から今回の決定の意味を考えることとしよう。

これまではEFSF
という救済基金方式

 これまでのユーロ圏の金融安定化策は、2つの流れで行なわれてきた。第1は、救済基金方式だ。これまではEFSF(欧州金融安定ファシリティー European Financial Stability Facility)を中心に行なわれ、今年10月からはESMに引き継がれる。

 第2は、ECBによる国債購入である。これらについて、これまでの経緯を見ると、つぎのとおりだ。

 2009年10月にギリシャの財政赤字粉飾が暴露され、それまで5%程度だった10年債利回りが上昇し、国債の発行が困難となった。このため、10年5月に、IMF(国際通貨基金)から300億ユーロ、EU(欧州連合)経由で800億ユーロの合計1100億ユーロの融資が実行されることとなった(ギリシャ第1次支援)。

 問題がギリシャに留まらないことが明らかになったため、10年6月、ユーロ参加17カ国によって、特別目的会社であるEFSFが、13年6月までの時限措置として設立された。融資枠は4400億ユーロで、必要な資金は、債券の発行によって調達することとされた。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

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