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森達也 リアル共同幻想論

過熱する領土問題
譲渡することも一つの選択肢だ

森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]
【第58回】 2012年9月28日
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 でも問題を先送りにして次の世代に託したとしても、発想や思考方式を変えないかぎりは、間違いなく新たな知恵など出てこない。

ならば「譲渡する」ことも一つの選択だ

 ならば「譲渡する」ことも、一つの選択だと僕は思う。

 人が居住しているのなら話は別だ。でも尖閣にしても竹島にしても北方領土にしても、現時点で日本国籍を有する人は住んでいない。

 もちろんタダとは言わない。漁業権やレアメタルなどの海洋資源、天然ガスや排他的経済水域などの問題については、譲渡のバーターとして、今後見込まれる利益を分配するとか契約を交わすとか交渉を継続し続けるとか、それこそ大人の知恵と分別が必要だ。

 あまり知られていないことだけど、国土面積において世界第61位の日本は、排他的経済水域の面積については世界第6位にランクしている。韓国はもちろん、中国やロシアよりも大きいのだ。ならば「ムキになる」以外の選択肢を示すことも、次の世代としては可能なはずだ。

 尖閣に上陸したのは香港の活動家たちだ。ところがその意趣返しのように日本から上陸して日の丸を掲げた10人のなかには、活動家だけではなく5人の地方議員も含まれていた。ならば意味がまったく違う。あまりに軽率だ。合図とともに船から一斉に海に飛び込むなど、ほとんど夏祭りの高揚だ。
(編集部註:8月15日に香港の活動家ら14人が魚釣島に上陸するなどし、17日に強制送還された。19日には、魚釣島沖で戦没者の慰霊に参加した日本人のうち10人が船から泳いで魚釣島に上陸した。)

今回の騒動の導火線は
石原都知事の尖閣購入計画のはずなのに……

 特にここ数日のニュースを見ていると、まるで中国や韓国がそれぞれ一枚岩となって反日の雄叫びをあげているかのような気分になってくるけれど、尖閣に上陸した香港の活動家たちは決して中国人の総意を体現しているわけではないし、イ・ミョンバク大統領のスタンドプレイを苦々しく思っている韓国人も数多い。メディアはそうした多面性を伝えなければならない。絶対に単純化してはならない。今こそ抑制を働かせなくてはならない。
(編集部註:8月10日、韓国のイ・ミョンバク大統領が竹島に上陸。韓国大統領が竹島に上陸したのはこれが初めて。)

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森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]

1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。


森達也 リアル共同幻想論

テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る!

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