尖閣諸島問題の深刻化で、中国のカントリーリスクの高さが浮き彫りになっている。しかし、日本企業が中国企業に対する直接投資などに二の足を踏んでしまう状況は、実はその前から始まっている。

尖閣諸島問題だけじゃない<br />中国企業の決算非開示の困惑反日デモなど、中国のカントリーリスクが顕在化している

 というのも、中国の非上場企業の決算書のデータが入手しづらくなっているのだ。

 中国に詳しい関係者によると、もともと中国企業は決算データを行政機関である工商行政管理局に提出しなければならない。信用調査会社はこれまで、中国の非上場企業の決算データについては、国の便宜で工商局が開示してくれたものを入手することが通例だった。

 ところが今年4月以降、工商局による情報開示がパタリと止まってしまったのだ。決算データを不正に販売していた業者が一斉逮捕されたことを契機に、工商局が情報管理を強化したというのが理由とされる。

 しかしこれでは、中国の非上場企業の決算データは企業と直接交渉して開示してもらえない限り、入手ができないということになる。ある日本の商社幹部は、「中国では欧米と違い、(銀行との取引を証明する)銀行照会状を入手するのも不可能なので、取引可否の判断はなおさら大変」と頭を抱える。

 8月頃からは一部、入手できるようになったところもあるというが、表向きは“解禁”がされないまま、すでに半年が経過。このままでは「大型投資などが滞る恐れがあり、すでに、その動きは出つつある」(信用調査会社幹部)。

 投資目的以外にも、取引先拡充などのために非上場企業の決算データを必要とする日本企業はごまんとある。何しろ、貿易関係者によれば、中国における日本企業は2010年末時点で約2万2000社もあるのだ。

 実際、これら中国進出企業は「(決算データを含む)調査報告書を頻繁に購入していた」(信用調査会社関係者)という。

 市場としては有望な中国だが、リスクがいろいろなところに潜んでいる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子、脇田まや)

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