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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

民事再生から、会社更生に回帰へ。倒産処理に変化を起こした“DIP型”会社更生

――「スピード感」と「信頼性」を両立する、時代に合った新ルール

永沢 徹 [弁護士]
【第59回】 2009年3月6日
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 2009年に入ってからも、企業の倒産が相次いでいる。その倒産処理において、実はいま、大きな“変化”が起きている。それは「民事再生」から、「会社更生」への“回帰”である。

 皆さんは、『DIP型会社更生』というものをご存知だろうか? これは、2009年に入って東京地裁で導入された新しい会社更生手続きである。その適用第1号となったのは、J-REIT(不動産投資信託)や私募ファンドを運営していた上場不動産会社「株式会社クリード」。さらに、日本綜合地所、スパンションジャパン、あおみ建設と続き、すでに4件(3月5日現在)で採用されている。

 また、今年に入って倒産した上場企業11社で見てみると、4社が「会社更生」(うち3社はDIP型、1社は従来型)、6社が「民事再生」、残り1社が「破産(清算)」をそれぞれ選択している。(実は、筆者はこのうち1社のDIP型会社更生申立代理人と別の1社の破産管財人となっている)

 昨年までの傾向(9割以上が民事再生や破産を選択)と比べれば、会社更生の率が大きく上がっていることになる。そして上場会社の会社更生申立の4分の3が、この『DIP型会社更生』である。

「会社更生」が
敬遠されてきたワケ

 では、なぜこれまで会社更生法の適用が敬遠されてきたのか――。それは、従来の会社更生手続きが、信頼性は厚いものの、制約も多く、重い負担を伴っていたからである。つまり、“時間がかかる”“手間がかかる”“費用がかかる”手続きだからだ。

 まず、申請の前に行なう事前相談で時間がかかる。裁判所がその後の事業を取り仕切る保全管理人(弁護士)を選任しなければならず、その候補者選定と保全管理人候補者による保全管理チームの組成のため、正式に裁判所に申請するまでに最低2週間以上の「事前相談」期間を要し、保全管理人団や保全期間中の公認会計士の費用等として1億円近くの予納金を用意しなければならないこともあった。

 申請後は、責任を取る形で経営陣は総退陣し、代わりに保全管理人団が事業運営に当たり、開始決定後は管財人が選任され、その管財人が再建計画を作成する。ただ、その計画が裁判所から正式に認可されるまでには1年以上を要してしまう。

 このように従来の会社更生手続きでは、再生計画実施までに長い時間がかかってしまうこともあり、その間に資産劣化や事業劣化が起こり、既に万策尽きてしまってるケースも少なくなかった。そのため、2000年に民事再生法が制定されて以降、倒産手続きの主流は一気に民事再生に傾いたのである。

 なんといっても民事再生の最大のメリットは「スピード感」である。申請までの事前相談では、短くて数日、長くても1週間程度。また、再生計画の認可までの期間、5ヵ月程度で済む。再建計画を比較的速やかに実行できるのである。また、経営陣にもメリットがある。会社更生では経営陣は総退陣しなければならないが、民事再生では経営陣は退陣せずに、自らが再建計画を実行することができる。

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永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


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