Facebookの台頭の一方で、今、続々と登場しているのが、あえて少人数間のコミュニケーションに特化したSNSだ。家族や親友など、本当に親密な関係にある人とだけコミュニケーションを図りたいというニーズは、確かにある。海外では「Path」が有名だが、日本でもシニア向けの「まごラブ」や、カップル限定の「ペアリー」など、様々な少数限定SNSが誕生している。

9人のみに限定したSNS「Close」。コミュニケーションにはスマートフォンアプリを用いる。近日中には韓国語、中国語に対応予定。アジア進出も視野に入れている

 こうした少数限定のSNSは、とかく“ソーシャル疲れ”の文脈で語られることが多い。不特定多数とのやり取りに疲弊した反動として、付き合う相手を限定したクローズドのSNSへと移っていき、そこで本音を語り合う。少数限定のSNSは、確かにそうした役割も担っている。だがそもそも、巨大SNSでプライベートな情報を数百人に向けて発信すること自体が不自然なのではないか?――そんな発想で生まれたのが、フレンド登録の数を9人に絞ったSNS「Close」だ。

「Closeで目指したのは、“決して誰にも邪魔されない、自分のための世界”です。今までのSNSは使えば使うほど、ユーザーが増えれば増えるほど、気づけば自分の意図しない繋がりや想定外の他者からの干渉から避けられなくなる、という問題を抱えていました。Closeではユーザーが追加しているフレンドや、フレンドを追加する際のプロセスを全てブラックボックス化することによって、絶対に踏み込めない領域をはっきりと設定しました。また、これまでのSNSでは当たり前だった基本情報、プロフィールのようなものも排除しています」(開発にあたったREVENTIVE, Inc. 水田大輔CEO)

 Closeで友人を登録する方法は大きく二つある。友人が既にCloseのユーザーであれば、申請や承認といったプロセスは必要ない。登録は、専用アプリに一覧表示された友人にチェックを入れるだけでいい。一方、友人がCloseのユーザーでない場合は、Facebookアカウントやメールアドレスを利用して招待する。いずれの方法でも、お互いが友人登録をしあって初めて、Closeのタイムラインに投稿が表示されることとなる。

 9人という数字には明確な根拠があるという。元Googleのユーザー体験担当者のPaul Adams氏のプレゼンテーション「The Real Life Social Network」の統計データによれば、「Facebook上で人が常時交流しているフレンド数は、たった4~6人しかいない」「現実世界で常時交流している人間は、7~15人しかいない」という。Closeではこのデータを基に「より多くのユーザーにとって、本当に親しい人たちとだけのプライベートな世界とはどうあるべきか?」を突き詰めた。その結果導き出されたのが、9人という解だ。

「“あなたに親友はいますか?”という質問に自信を持って答えることのできる人数は、そんなに多くないはずです。私たちはCloseを使って、ユーザーが本当に大切な繋がりを手に入れることができればいいなと思っています」(同氏)

 少数限定のSNSは、必ずしも巨大ソーシャルメディアから逃げるための駆け込み寺ではない。人と人とのコミュニケーションの本来のあり方を問い直すきっかけを作る場所といえるのではないだろうか。

(中島 駆/5時から作家塾(R)