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“ジョブズの遺言”を破ってまで発売した
「iPad mini」の勝算

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第219回】 2012年11月7日
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 アップルが、うわさ通りに小型タブレットコンピュータのiPad miniを発売した。

 生前のスティーブ・ジョブズは小型のタブレットなど必要ないと、ある株主総会で理路整然と説明していたことがあった。iPhoneやiPodという小型サイズの製品が一方にあり、他方に10インチのタブレットであるiPadがある。その間に製品を作ると製品間の差異がわかりにくくなり、共食いしてしまうといったような内容だったと覚えている。スクリーンも十分な大きさがなく、迫力ある画像表現ができないといったようなことも言っていた。

 それがちょうど2年前くらいのことだったろうか。しかし、それ以降タブレット市場はすっかり変わったのだ。

 アップルがどうしても7インチのタブレットを世に出さなくてはならなくなった最大の理由は、競合企業であるグーグルやアマゾンが7インチのタブレットで勝負をかけ、それが功を奏してアップルのタブレットの市場シェアを奪い始めていたからである。

 実際、iPadは使い方によってはサイズが大きすぎる。持ち歩くには少々重く、夜ベッドで読書しようとしても、枕の上で支えなければならない。もし手で持ち上げたまま寝入ってしまったら、頭の上にiPadが落ちてきて額が割れる、といった類いの冗談もよく出回っていた。

 タブレットは欲しいが、iPadは持ちにくいといった印象を持っていた消費者が、アマゾンのキンドルファイアやグーグルのNexus 7に飛びついた。何と言ってもキンドルファイアもNexus7も価格がiPadの2分の1以下。もう、これだけで小型タブレットの消費者市場がすっかりできあがってしまったのである。

 それを見過ごせなかったアップルは、先行したアマゾンに遅れること約1年。ようやくiPadを縮小させたようなiPad miniを出したというわけだ。

「3日で300万台」で品切れ状態も
アメリカでは賛否両論が噴出

 アップルの発表によると、iPad miniは発売後の週末3日間で300万台を売り上げ、すでに品切れ状態。これは、これまでのタブレットで最高の売り上げ速度だという。それなりの人気は博すだろうが、さて小型タブレットでアップルが勝利を収めるかどうかは、まだまだわからない。と言うのも、これからのタブレット競争はただ機器間の競争ではなく、それで見られるコンテンツ量やクラウドの使い勝手、また価格が大きく左右するからだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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