元巡査部長に詐欺を持ち掛けたのは、不倫相手だった。「奥さんはパートだから、ちょっとごまかせば持続化給付金を取れるんじゃない?」。妻は配送商品を仕分けする仕事をしており「何か良からぬこと」と感じたのか拒否していたが、結局は夫が愛人に貢ぐための詐欺の片棒を担がされてしまったわけだ。

 詐欺事件の構図としては国が被害者ということになるが、全額返還で被害は回復している。警視庁は東京地検に、夫婦とも起訴を求める「厳重処分」の意見を送付した。ある意味で一番の被害者は妻で、とんだとばっちりかもしれない。

人生を棒に振った
エリート公務員たち

 今年6月には、同じくコロナ禍で売り上げが減少した中小企業などを支援する家賃支援給付金をだまし取ったとして、警視庁は経産省産業資金課係長の桜井真被告(28)=詐欺罪で起訴済み=と、産業組織課職員の新井雄太郎被告(28)=同=のキャリア官僚2人を逮捕した。

 2人は持続化給付金の詐取も含め計3回、起訴された。起訴状によると、両被告は事業実態のない法人2社の収入が大幅に減ったなどと虚偽の申請をして、給付金計1500万円余をだまし取ったとされる。

 桜井被告は慶応義塾高から慶応大に進学し、民間企業勤務を経て2018年入省。新井被告は高校の同級生で、東大を卒業し20年入省。いずれも勤務態度に問題はなかったとされ、危険な橋を渡る必要などなく、将来は安泰だったはずだ。経産省は逮捕・起訴を受け7月、2人を懲戒免職にした。

 昨年12月には、愛知県警が持続化給付金を詐取した大学生と共謀したとして、甲府税務署職員の男(当時26)を逮捕した。前述のデスクによると、自身は虚偽の申請はしていなかったが、職務で得た知識を悪用。元大学生らの依頼で500通を超える確定申告書を偽造し、報酬として400万円以上を受け取っていたという。

 逮捕・起訴を受けて東京国税局は今年3月、「適正な確定申告書の作成を指導する立場の税務職員が不正受給に関与するなどあってはならない」などとして懲戒免職に。名古屋地裁一宮支部は5月、有罪判決を言い渡した。

 同じ昨年12月はほかにも、警視庁が国立印刷局の職員2人を逮捕、2人を書類送検した。4人はいずれも20代で、起訴された後、懲戒免職となった。逮捕された2人は虚偽申請で不正受給したほか、同僚らに手口を指南し、報酬を受け取っていたとされる。