第1回では、2人の出会いを中心に、官僚機構と民間企業の関わり方について語ってもらった。今回は、経済産業省の人事から始まり、エースと目されていた人材が外資系金融機関やコンサルタント会社へと流出している現実、そしてその大きな要因ともなった民主党政権の問題点まで議論が深まる。
連載は全4回。次回更新は、12月5日(水)を予定。(構成/本多カツヒロ)
「男気に溢れ」「頭が切れて」「嘘をつかない」人が出世する
竹内 経産省で事務次官まで出世するような人はどんな人なんですか?
中央大学理工学部電気電子情報通信工学科教授。1967年東京都生まれ。93年、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了。工学博士。同年、(株)東芝に入社し、フラッシュメモリの開発に携わる。2003年、スタンフォード大学ビジネススクール経営学修士課程修了(MBA)。帰国後は東芝フラッシュメモリ事業の製品開発のプロジェクトマネジメントや企業間交渉、マーケティングに従事。2007年、東芝を退社し、東京大学大学院工学系研究科准教授を経て、2012年4月からは中央大学理工学部教授。フラッシュメモリ、次世代メモリの研究・開発で世界的に知られる。著書に『世界で勝負する仕事術』(幻冬舎新書)がある。
宇佐美 いろいろなタイプがいます。一番経産省らしく王道なのは、自分は方針を示し、実際の行動は部下に任せて「俺についてこい。責任は自分がとる」と行動できる人。そういう人が本流中の本流ですね。
竹内 そうするといろんなところでぶつかりますよね?
宇佐美 ぶつかります。ぶつかっても知恵と強さでその壁を乗り越えられる人が本流になっていきます。
竹内 それは興味ある。そういった人にはどんな特徴がありますか?
宇佐美 「男気に溢れ」「頭が切れて」「嘘をつかない」タイプですね。
竹内 そういうタイプは経産省に多いんですか?
宇佐美 どれか2つの条件を満たす、という程度ならたくさんいますが、3拍子揃うとなるとあまりいませんよね。
竹内 そういう本流の人は、どこかで足をすくわれたりはしないですか?
宇佐美 本流の人は経産省内で絶大な信頼を得ているので、失敗して左遷されても、また成果を上げて出世コースに戻ってくるので大丈夫なんです。経産省内での信頼度を示す表現として、「あいつは何万石だ」なんてよく言ってるんですが、いま経産省で力を持っている人は審議官時代に「100万石」と呼ばれていました。
竹内 でも組織ですから、「100万石」になる前に、優秀な人が早めに潰されたりはしないんですか?
宇佐美 確かに、突然エースと目されていた人が組織去ることはあります。ただ、たいていの場合は残ります。みんなそういう優秀な人を守ろうとしますから。