芸能界でも「介護脱毛」をする人が増えているようだ。フリーアナウンサーの小林麻耶さん(42)は、介護脱毛中であることを自身のブログで明かしている。またお笑い芸人の田村淳さん(48)は、YouTubeチャンネル上で実際に介護脱毛をしている施術現場の動画を配信した。俳優の的場浩司さん(52)も、介護脱毛を検討中だという。近年、介護脱毛を検討するミドル世代が増加していることの裏付けとも取れる。

 40代、50代に突入し、親の介護が身近になったミドル世代は、将来自分が介護される場面まで念頭に置いて介護脱毛を考え始めている。この点において、介護脱毛は従来のアンダーヘア脱毛とは一線を画する。

「介護」と「脱毛」。距離のある言葉を結びつけたリゼクリニックの功績は大きいだろう。「婚活」や「ヘアドネーション」のように、言葉が先にあると、人は行動を起こしやすい。「介護脱毛」がもっと一般化したら需要はさらに急増するのではないか。

「アンダーヘアはないほうがありがたい」介助者の痛切な願い

 筆者は特別養護老人ホームに勤務しているので、現場の声も届けたい。

 まず同僚10名弱の介護士たちに「『介護脱毛』を知っているか」と問うと、すぐにピンときた人は一人もいなかった。続けて、「『介護脱毛』とは将来自分が介護されることを見据えてアンダーヘアを脱毛すること」と伝えると、3名ほどが何かを思い出したかのようにうなずいた。

 つまり高齢者の介護を専門にしている人間のあいだでも、「介護脱毛」はまだまだ全然認知されていないのが現状である。内容まで聞いてやっと、「何となく知っている」と思い至った同僚が数名いた程度だ。

 とはいえ、高齢者のアンダーヘアの有無について議論を進めると、満場一致で「アンダーヘアはないほうがありがたい」という結論になった。そして議論は、介護士として欠かすことのできない「排泄(はいせつ)介助」が中心となった。